<ソフトバンク3-4阪神>◇2日◇ヤフオクドーム

 阪神が逆転勝ちで首位に浮上した。新人藤浪が先発では最短となる6回途中2失点で降板したが、7回に流れを変えた。和田豊監督(50)が開幕4番の新井良に代打を送る勝負手を打ち、代打桧山、柴田の連続適時打でソフトバンクを逆転。藤浪の黒星を消した。5連敗と元気のない巨人に代わり、昨年4月19日以来の首位。指揮官のタクトがさえた。

 和田監督が動いた。勝負どころを逃さなかった。2点を追う7回。そこまで2安打に抑えられていた右腕パディーヤから1死二、三塁のチャンスをつくった。打順は7番新井良。だが、指揮官はベンチを立ち上がり、厳しい表情で告げた。「代打、今成」-。

 開幕4番を任せた“和田チルドレン”とも言える成長株に今季初めて代打を送った。さらに、ネクストバッターズサークルには正捕手藤井彰に代えて、桧山を送り出した。福岡の虎党のボルテージが一気に上がった。次々と繰り出す攻めの采配に劣勢の空気がガラリと変わった。今成の犠飛で1点差とすると、桧山が右中間突破の二塁打で同点とした。

 「決断というよりも、ベンチにいる選手がしっかりと期待に応えてくれた」と和田監督。だが勝ち越しの場面では、その洞察力が生きた。なお、走者二塁で打席には9番柴田をそのまま送った。「2打席とも見逃し(三振)だったからね…。ただ…。2打席目は粘った末にタイミングがあってきていたから。ひょっとしたら、というのはあったよ」。

 迷いはあったようだ。ただ、前の打席で見た7つのファウルが指揮官の脳裏に焼き付いていた。すると、柴田が散々苦しめられた内角球を右前にはじき返した。勝ち越しだ。和田監督が立ち上がってから、わずか数分間の猛反撃。一気に相手をのみ込んだ。

 ある主力選手は指揮官について言う。「客観的に、選手を見ることができる人だと思います。選手の状態を見抜く力がすごいです」。心に熱を持ちながら、頭を冷静に保つことができる。ガス欠寸前のパディーヤにだれをぶつけるか。和田監督を筆頭にしたベンチの洞察力が、鮮やかな逆転勝利を呼んだ。

 昨年4月19日以来、409日ぶりにペナントレースのトップに立った。それでも和田監督の頭はクールに保たれていた。「まだ、6月頭のことだからね。今は交流戦を1試合、1試合、勝っていくことに集中したい」。巨人を見下ろす快感に浸るのは、まだ先だ。指揮官は一戦必勝を強調した。【鈴木忠平】

 ▼阪神が08年以来のセ・リーグ30勝一番乗りで首位に立った。阪神の単独首位は昨年4月19日以来で、6月以降の首位は10年9月9日以来となる。最近の阪神はデーゲームに弱く、デーゲームでは11年が11勝21敗1分け、勝率3割4分4厘、12年が12勝18敗3分け、勝率4割だったが、今年は12勝6敗、勝率6割6分7厘(ナイターは18勝15敗2分け)。特に、5月以降のデーゲームは○○●○○○○○○と強く、交流戦のデーゲームは5戦5勝とまだ負けていない。