<日本ハム3-2広島>◇16日◇札幌ドーム

 日本ハム栗山英樹監督(52)が、広島に勝利し、監督通算100勝目を挙げた。2点リードの9回、1点差に詰め寄られる薄氷勝利だったが、今季3度目の3連勝で、借金は5月9日以来の「6」まで減った。7年連続の交流戦勝ち越しも決めた。場所を移して行われる明日18日の同戦(マツダ)は、先発大谷にチーム4連勝を託す。

 選手をたたえ、自分を戒める。節目の白星でも、いつもと同じ姿があった。

 栗山監督

 100勝なの?

 それはどうでもいい。監督をやめたときに、したんだなぁって考えるかもしれないけど、今は実感がない。(選手たちが)前に進んでくれているからこそ、この星取りになっていることに責任を感じる。

 最下位にいては、喜ぶことなどできなかった。

 指導者経験がなく、不安だけを胸に走った1年目。その先に待っていたのは、さらなる困難だった。コーチ陣が残留していた昨季とは違い、今季は阿井ヘッドをはじめ、首脳陣の顔ぶれが変わった。栗山政権の“実質的な1年目”。その船出に、失敗した。けが人が相次ぎ、借金は膨らんだ。「胃薬が手放せない。一番強いやつ」。言葉は冗談交じりでも、本当に体は悲鳴を上げている。

 それでも選手、コーチを信頼し、自分の信念は曲げなかった。バッテリーコーチが投手を、あるいは打撃投手が選手にアドバイスを…。他球団では“越権行為”ととられるようなことも「どんどんやってくれ」と伝えてある。「チームをよくしようと思ってやっていることだから」。苦しい現状を脱するための一生懸命な言動は、絶対に否定をしない。何よりも目指したのは、戦う集団として、一体感をつくりあげることだった。

 3回、稲葉、中田、アブレイユとつながった3連打。最後までリードを守りきった投手陣。低迷はしていても、日本ハムらしい形が、ようやく戻りつつある。「みんなが悔しさを感じて、ジレンマを抱えて…、同じことを感じてやってくれているように見えた」。全員と交わした100回目のハイタッチは、明るい未来を予感させてくれた。

 監督室にあるホワイトボード。今季途中から、ある言葉が記されている。

 「本当のプライドとは、自分の決め事を守れるかどうか」

 栗山監督は言う。「本当の誇りって、他人からどう見えるかなんて関係ないんだよ」。大敗し、連敗し、黒星を重ねた。選手やファンのうつむく姿に、心は痛んだ。それでも、ただひたむきに、自分の信じる道を突き進んできた。

 今季3度目の3連勝で、借金は約1カ月ぶりに「6」まで減った。試合後、ウイニングボールは選手たちの手から、指揮官の元に届けられた。少し汚れたそのボールは、一体感の象徴でもあり、上位進出への光として、まぶしくも見えた。【本間翼】

 ▼日本ハム栗山監督が100勝目を挙げた。就任2年目の計203試合目での達成だった。北海道を本拠地にした日本ハム監督では、08~11年まで指揮した梨田昌孝監督が、2年目の09年に通算189戦目(近鉄時代をのぞく)で100勝目をマークした。03~07年まで務めたトレイ・ヒルマン監督は、2年目の04年に通算222試合目で100勝を記録している。<栗山監督白星アラカルト>

 ◆初勝利

 昨年3月30日の開幕戦(対西武、札幌ドーム)で、開幕投手に抜てきした斎藤が完投勝利。2番に稲葉を起用する攻撃型オーダーがはまり、22年ぶりにユニホームに袖を通した1年目で最高のスタートを切った。

 ◆中田にウルウル

 昨年4月5日のオリックス戦(札幌ドーム)で開幕から24打席無安打だった4番中田が本塁打を放ち「感動があるから前に進めるんだな~と思う」。ベンチで目を潤ませた。

 ◆7投手継投で完封

 昨年8月15日の楽天戦(Kスタ宮城)で、先発八木が危険球退場後、6投手がつなぎ、初の初回退場での完封勝ち。「ウチがここ(首位)まで来ているのは、中継ぎの頑張りがあるから。ある意味、典型的なゲームだった」。

 ◆大谷抜てき

 今年3月29日の開幕戦(対西武、西武ドーム)で、高卒新人の大谷を「8番右翼」でスタメン起用。2安打1打点の鮮烈デビューに「褒めたかないけど、たいしたもん」。