二刀流に挑んでいる日本ハム大谷翔平投手(18)が、快挙ずくめで夢舞台切符をつかんだ。マツダオールスターゲーム2013(7月19~22日)のファン投票の最終結果が24日に発表され、大谷がパ・リーグの外野手部門3位で選ばれた。高卒新人外野手では史上初、規定打席未到達の野手では42年ぶり2人目の選出となった。全パ・リーグを率いる栗山監督は外野手での起用を基本線としながらも、条件付きで投手としての出場も示唆した。

 努めて謙虚に受け止めた。大谷は騒ぎ立てる周囲をよそに、ビッグマウスを封印した。クレバーで、チームメートからは空気も読めると評判の18歳。幼少時からあこがれ、権威を熟知する舞台だからこその葛藤があったのだろう。控えめな喜びの弁が口を突いた。

 大谷

 本当に実力では僕より上の選手が、たくさんいる中で選んでいただいたのはファンの方々に感謝したいですし、すごくうれしいので、本当に期待に応えられるようなプレーができればいいかなと思っています。

 QVCマリンでのロッテ戦前、吉報を知った。高卒新人外野手では史上初。規定打席に到達していないが選ばれた。異質な二刀流に挑戦する自分への注目度を再認識する28万4737票の重みに奮い立った。「自分のスイングであったりとか、その場その場で全力プレーが出来ればいいなと思います」。実績十分の球界の先輩たちに配慮しながらも、固く約束した。

 初めての真夏の祭典で、わずかながら二刀流が実現する可能性も残された。全パを率いる栗山監督は「外野手で選ばれたんでしょ」と、基本線は野手という構想を明かした。だが投手陣に故障など緊急事態が発生した際は例外と示唆。スクランブルなどイレギュラーな投手起用は他球団選手より、自軍の選手に負担をかけやすい事情がある。同監督は大谷を含めた日本ハム投手陣に「無理をしていってもらうしかない」。偶然の産物で二刀流がお披露目されるという夢が、少し膨らんだ。

 大谷本人は消極的も、期待するファンのために信頼する指揮官にゲタを預けた。「どうなるか分からないですけど、本当に多くの一流の選手ばかりが集まるところなので、多くのことを勉強させてもらえると思うし、多くの方に楽しんでいただけたらと思います」と。舞台裏では、弾む胸の内をのぞかせていた。島田球団代表に「居場所ないだろ」とからかわれるとニンマリ。監督推薦などで選出の可能性が高い花巻東の先輩、西武菊池に救いを求め「まず雄星さんへ、あいさつへ行きます!」とハツラツと答え、高ぶる思いを見せたという。大谷がパイオニア精神を貫き、夏祭りに新風を吹き込む。【高山通史】<高卒新人球宴アラカルト>

 ◆ファン投票選出

 07年田中(楽天)以来、6年ぶり10人目。野手では5人目で、外野手は大谷が初めてとなった。過去の野手4人のうち、55年榎本(毎日)86年清原(西武)88年立浪(中日)は選出時に規定打席に到達していた。規定打席不足で選ばれたのは71年島本(南海)以来、42年ぶり2人目になる。島本は箕島時代にエースで70年センバツ優勝。同年ドラフト1位で南海に入団し、野手転向。球宴前の1軍出場は4月に代打で三振、遊飛の2打席だけで1度も守らなかったが、一塁手として大杉(東映)を70票上回り1位で選ばれた。

 ◆安打と勝利

 球宴で高卒新人が安打を放ったのは過去3人だけ。66年に投手の鈴木(近鉄)が左安、86年に清原(西武)が一安と左本、88年に立浪(中日)が中安を記録している。高卒新人の勝利投手は62年尾崎(東映)しかいない。

 ◆二刀流は

 高卒に限らず、球宴で投手と野手を1試合でこなしたのは96年第2戦のイチロー(オリックス)だけ。イチローは右翼でスタメン出場。9回2死で打者松井(巨人)を迎えたところで、ファンサービスもあり救援登板。代打高津(ヤクルト)を遊ゴロに仕留めた。