<西武1-10楽天>◇27日◇県営大宮
楽天待望の先発左腕の誕生だ!
「ボブ」こと川井貴志投手(36)が今季初登板初先発し、6回を無四球でソロ本塁打による1点に抑え、今季初勝利を挙げた。楽天では、先発左腕の勝利どころか、先発も初めて。昨年6月26日、日本ハム戦以来の白星をマークした「36歳の先発左腕」が、救世主として浮上した。
「ナイスピッチ」。試合後、川井は星野仙一監督(66)から一言、声をかけられた。2軍で地道に流した汗が、報われる瞬間だった。「こうして使ってもらって、1試合目で勝てて良かったです」と、しみじみ言った。
今季65試合目にして、左腕が先発するのは初めて。昨季8勝の辛島、同6勝の塩見は故障離脱。珍現象にピリオドを打ったのは36歳の救世主だった。星野監督は「困った時のボブだよ。毎回、ランナーを出したけど、右打者の外のチェンジアップだかフォークが良かった」とベテランの好投に感謝した。
ボブ。ニックネームはファンキーだが、地道な努力を重ねてきた。「2軍は調整の場ではないぞ」という大久保2軍監督の号令の下、「少しでも前進するように考えました」。体幹トレに加え、バランストレーニングを黙々と繰り返した。今季から、先発登板後にもウエートトレーニングを行った。効果は直球の質はもちろん、特にフォークに表れた。2軍で受けた捕手の伊志嶺は「フォークがいいです。どのカウントでもいけます」と証言する。唯一の奪三振、3回鬼崎のフィニッシュはフォーク。4回のヘルマンの併殺もフォークだった。粘り強く低めに集め、凡打を打たせた。
ボブの怒りが、打線に火を付けた。1回1死一塁。栗山の一塁ゴロでベースカバーに入ると、足が離れたとセーフの判定。極めて温和な男が「違う、踏んでいる」とばかりに、首を振った。ボブには珍しい光景だった。
ボブのことを、星野監督は「大阪桐蔭っぽくないな」と評する。大阪桐蔭といえば、日本ハム中田に代表されるように、元気なやんちゃ者を想起するが、ボブは正反対。そんな控えめな男の激情が、ナインの心を動かした。平石打撃コーチ補佐も「川井さんのこの試合に懸ける思いを、野手みんなが感じてる。いつもより熱くなってた」と話す。報道陣から救世主襲名を問われると、柔和な笑みで「頑張ります」と、おちょぼ口。やっぱり、ボブらしい、柔らかな宣言だった。【金子航】
◆楽天の先発左腕事情
昨季6勝の塩見は左肩痛で2月末に離脱し、2軍でも登板していない。同8勝の辛島は左肘痛で3月前半に離脱。6月中旬に2軍で実戦復帰した。先発、中継ぎ両方で期待された金刃は左手指痛で2月中旬に離脱。4月に移籍後初昇格したが、再発し6月初めに離脱した。ドラフト1位の森は2軍で先発登板を重ねているが、昇格の見通しは立っていない。




