<日本ハム9-1西武>◇29日◇札幌ドーム

 日本ハム中田翔内野手(24)が、リーグ一番乗りの20号アーチでチームの借金を完済した。2回、先制のソロをバックスクリーンに運んだ。下半身の張りで左翼の守備には就かず、3季ぶりの指名打者に入って、第1打席の初球を完璧に捉えた。4番のバットは借金が10になった6日以降の14試合で7発と絶好調。昨季のパ王者が今季2度目の5連勝で勝率を5割に戻し、いよいよ上位争いに参戦だ。

 圧巻のフルスイングから、節目を飾るド派手な1発が出た。中田の2回の第1打席。初球、145キロ。打球はぐんぐん伸び、バックスクリーンへ突き刺さった。3万7271人の観衆が、どよめくパ・リーグ一番乗りの20号。15安打9得点で大勝した打線の火付け役になった。「たかが20本。1本が左右するような試合で、もっともっと打ちたい」と振り返ったが、借金を帳消しにする価値ある一振りだった。

 アクシデントをはねのけた。この日、中田の自己申告によれば左ふくらはぎに張りを感じていたという。栗山監督は「オレが怖がって大事をとった」と考慮。3年ぶりに指名打者でスタメン出場した。久しぶりの感覚に「難しさをあらためて感じた」。定位置の左翼の代役はベテラン稲葉。1回の先頭打者のファウルフライを落球し失策した先輩に「すごく負担かけてしまって申し訳ない」と思った。打席では「先制点さえ取れれば、流れがパンパンくる」と気力をみなぎらせ、今季は3戦全敗で2度の完投を許した西武十亀から、いきなり1発を放った。

 驚異の巻き返しを演出している。今季最多タイの借金10を直近14試合で12勝2敗で完済。その間に54打数19安打、13打点に7本塁打と奮闘した。「やっとチームの状態が戻ってきた」と、再浮上の光が見えた時期だからこそ強行出場した。3月30日の西武との開幕2戦目以来の勝率5割復帰。栗山監督に「また開幕の時のように戻れるので一生懸命、命がけでいきます」と、再スタートの切符をプレゼントした。

 ワイルドな風貌とは裏腹に、地道な努力を積んでいる。札幌市内の自宅マンションからたびたび、バットを手に外出。高校球児のように人目も気にせず、屋外のスペースで一心不乱に素振りをしているという。ファンが見つけ「頑張ってください」と声をかけられると、素直に「ありがとうございます」と返答。近所の人たちからは愛され、温かく見守られている。熱いハートの若き主砲は「やっとスタートラインに立てたかな」。中田が率いる昨季覇者が、混パの台風の目になってきた。【田中彩友美】