<ヤクルト0-2巨人>◇30日◇静岡

 不惑のリードオフマンが巨人をけん引した。今季初出場の谷佳知外野手(40)が、球団史上最年長となる1番起用に応えた。3回にチーム初安打を放つと、5回には貴重な左前適時打。ヤクルト先発石川攻略に成功した。プロ17年目にして初めて開幕を2軍で迎えたが、実力者の技術は磨き抜かれていた。2カード連続で無失点リレーも完成。投打がガッチリかみ合い、2日からの阪神との首位攻防戦に臨む。

 何度も向きを変えて、静岡のファンに深く頭を下げた。谷は相変わらず紳士だった。長い球団史を塗り替えた最年長リードオフマンは「久々で、ちょっと緊張しました」と正直だった。3回に今季初安打を放ち「気持ち良く打席に入れた。来た球を打つだけ」と、5回1死二塁のチャンスを迎えた。ヤクルト石川の初球、スライダーの軌道とスイング軌道を正確に合わせた。通算1916本目の安打も相変わらずのミート技術で、左腕攻略に成功した。

 好打者が、2軍での日々を無駄にするはずもなかった。2月1日、春季キャンプ初日の朝だった。谷は一回り若い選手たちの輪から離れ、薄暗い宿舎ロビーの片隅に座っていた。ブラックの缶コーヒーを手に、同じ1973年生まれの小笠原に問いかけた。

 年明けからキャンプ地の宮崎で自主トレを行うガッツは、施設内の土地勘があった。谷は「室内ドームの中にある仕切りの中は、どうなっている?

 マシンは何台ある?

 カーブマシンはあるかな?」と矢継ぎ早に聞いた。「通常メニューの他に、何とかして自分の技術練習の時間を確保しなくては」。1軍選手が練習を終えた夕刻から、カーテンで仕切られた密室にこもることを日課とした。

 開幕1軍メンバーから漏れた。若手の登用。チームバランスの兼ね合い。事情が重なった。それでも「不惑」を地でいった。午前6時30分起床はプロ17年目で初めての経験だった。「早いなぁ。なかなか慣れなくて。(日本ハムの2軍本拠地の)鎌ケ谷…、ここまで運転するのも初めてだね」と生活サイクルは変わった。ただ「自分のことをしっかりやろう」と、スイングの研究に徹した。4、5月と2回腰を痛めたのは、技術の追求をやめない証しだった。

 自負がある。

 谷

 オレは「読まない打者」と言われるけど、読まないわけじゃない。長いことやってきたから、状況に応じてこれが来るな、と思うことはある。ただ、読みと違う球種、コースに来ても体が反応する。だから変化球を待っていても直球を打てる。三振するのは嫌。野球は(打球を落とすエリアが)90度ある。全部の球を打ちたいと思っている。

 原監督は「よく打ってくれた。この時期、可能性を模索、追求していく必要がある」と、1番谷を評した。明日2日から甲子園で阪神戦。初戦先発が予想される能見に対し、谷は通算3割9分1厘と圧倒している。

 ▼1番で出場した谷が適時打を含む2安打。谷の1番は昨年8月7日阪神戦以来で、巨人移籍後は32試合目。現在、谷は40歳4カ月。40代の1番打者は昨年10月8日石井(広島=42歳1カ月)がDeNA戦で打って以来だが、巨人では57年南村以来、56年ぶり2人目だ。57年の南村は1番で4試合に出場し、最後に打った6月15日中日戦は40歳1カ月。40歳4カ月の谷が巨人最年長1番打者となった。ちなみに、南村が1番を打った4試合は通算13打数1安打、打点0だった。