<巨人6-3ヤクルト>◇9日◇山形

 巨人が誇る2枚看板が、山形の夜空に続けて花火を打ち上げた。同点の7回、坂本勇人内野手(24)の9号2ラン、阿部慎之助捕手(34)の21号ソロが連発で飛び出した。59年ぶりに当地で行われた巨人戦で、追いすがるヤクルトを派手に突き放した。7回3失点の先発菅野に8勝目をプレゼント。やっぱりこの2人、頼りになる。

 ここしかなかった。同点の7回。2死二塁で3番坂本が、ヤクルト久古のインローを捉えた。球場が地鳴りのようにどよめいた。左中間最深部に運ぶ9号決勝2ラン。巨人では1950年の川上哲治以来63年ぶりに山形の空にアーチを描いた。「大先輩の次にホームランを打てて、すごく光栄です。『入ってくれ』と思いながら走った」と振り返った。

 球場の興奮が冷めやらない直後の打席。しかも、初球だった。「4番・一塁」で5試合ぶりに先発復帰した阿部だ。外寄りスライダーを右手1本で右翼席にぶちこんだ。「うまく引っかかった。どさくさだったけど、いい追加点になった」と、自らの復帰に祝砲を打ち上げた。「あとはマスクをかぶって、フルでいけるようにだね」と、完全復活をも加速させる一撃で試合を完全に決めた。

 2人の頭の中には菅野がいた。坂本は7回の守備で平凡なゴロをトンネル。そこから同点に追いつかれた。「智之のときに、いつもエラーしてしまう。なんとか勝ちをつけたかった」と、汚名返上弾で倍返しした。阿部は菅野の前回登板だった2日の阪神戦で、右脇腹を痛めて負傷退場。夏場に苦しむルーキーの力になれなかったことを悔いた。「新人で7勝でしょ。十分、頑張っている。今は苦しいとき。なんとか助けてあげたいし、それが俺たちの仕事」と、試合前から菅野の勝ち星を意識していた。

 男前な2人に原監督も賛辞を惜しまなかった。「久しぶりに根性を見た。3番、4番がしっかりと仕事をしてくれた。技術も大事ではあるけど、それよりも、もっと何か重要なものを見た。周りのメンバーにも伝わったのでは」と、男の仕事ぶりを評価した。前日8日は体調不良でチームとは別便で山形入りした坂本は「格好いいところと、格好悪いところを見せられて良かった」と、おどけた。G戦士の心意気を、半世紀以上遠ざかっていた山形の地でも証明した。【為田聡史】

 ▼7回に坂本、阿部が続けて本塁打を放ち、巨人は54年8月7日洋松戦以来となる山形県内の試合を白星で飾った。山形県内の試合で巨人選手が本塁打を打ったのは50年4月25日国鉄戦の川上以来、63年ぶりだ。坂本と阿部のアベック本塁打は今年の4月19日広島戦に次いで通算21度目だが、連続本塁打は12年8月21日ヤクルト戦の5回(3番坂本、4番阿部)に記録して以来2度目。阿部は坂本が打った直後の初球で、2人が2球続けて本塁打は初めて。