<ヤクルト8-3広島>◇13日◇神宮

 蒸し暑~い神宮の空に美しい放物線を描いた。ヤクルトのウラディミール・バレンティン外野手(29)が2本の特大本塁打を放った。1回の第1打席で、推定飛距離135メートルの30号ソロ。2回2死満塁では見逃せばボールの球を強引に引っ張って130メートルの来日初の満塁本塁打とした。今季の出場試合数で計算するとシーズン62発のハイペース。カリブの怪力男はもっともっと打ちまくる。

 打球の勢いが、飛距離が違いすぎる。2発とも、打った瞬間に本塁打を確信させる当たり。広島の外野陣は動かず、打球の行方をただ力なく見送るしかできなかった。初めてお披露目した緑のサードユニホームを身にまとったバレンティンが悠々とダイヤモンドを回るたび、満員御礼が出た神宮でヤクルトファンの傘が大量に揺れた。

 節目の30号は1回だ。2番上田のプロ1号で追いつくと、4番らしい豪快な打球がバックスクリーンへ一直線に伸びた。大竹の真ん中に抜けたスライダーをとらえ「自分のポイントまで呼び込んで打つことができた」。自画自賛の当たりは、スコアボード下の「TOSHIBA」看板付近まで到達。推定135メートル弾で、勝ち越しに成功した。

 2回には「クソボール」をたたいた。2死満塁でフルカウント。肩の高さへの直球、見逃せば完全にボール球を左翼席上段へ運んだ。推定130メートル弾は、意外にも来日3年目で初めての満塁アーチで「強引だったけど、たまたま飛んでくれた。(日本語で)キモチイイ」と喜んだ。前日12日の広島戦でも最終打席で本塁打を放っており、3打数連発の好調ぶりで2位ブランコに3本差をつけた。

 推定130メートル超の特大アーチを連発しても、ナインはそれほど驚かない。日常の練習で、もっとすごい打球を目の当たりにしているからだ。交流戦最終節の日本ハム戦で、バレンティンはひそかに本拠地・神宮球場の歴史に残る“伝説”をつくっていた。試合前の打撃練習で放った打球が左翼席の高さ約10メートルある防球ネットを越え、チーム内で大きな話題となった。

 その時に投球した村田打撃投手が「ネットに突き刺す打球は何度かあったけど、越える打球は初めて見た」と言えば、外野を守っていたゼット社の赤川辰美さん(49)は「ものすごい当たりだった。神宮の場外弾は、試合でも練習でも記憶にない。隣接するゴルフ練習場までいった。160メートルは飛んだんじゃないかな」。ヤクルト担当歴32年目の大ベテランが、驚きを交えて証言した。

 球団史上最高のパワーで、11年、12年に記録したシーズン自己最多31発に早くも並んだ。両リーグ最速30発には「オールスター前に打てたことは個人的に満足している」と目指す先は、もっと上にある。シーズンでは57発ペース。故障で12試合に欠場しており、出場試合数で換算すれば62発ペースの量産ぶり。日本記録を狙える、という質問が飛ぶと「60発ダイジョウブ」と日本語で答え、自信ありげに笑った。【柴田猛夫】

 ▼昨年、球団初の両リーグ30号一番乗りを記録したバレンティンが今季も一番乗り。2年連続両リーグ30号一番乗りは02、03年のローズ(近鉄)以来7人、9度目になる(王が3度記録)。昨年の30号は9月28日にマークしており、球宴前の30号到達は球団史上初。チーム78試合目で31本は年間57本ペースになり、シーズン最多の55本(64年王、01年ローズ、02年カブレラ)に届く可能性もある。