<阪神0-1中日>◇7月31日◇甲子園

 負けはしたが、巨人追い上げへ、光も差し込んだ。阪神岩田稔投手(29)が復活の力投だ。5月11日以来の1軍マウンドで8回2安打1失点の好投。5回に痛恨被弾で4敗目を喫したが、フォームを修正して臨んだ一戦で、躍動。先発ローテに頼もしい左腕が帰ってきた。

 試合開始直前、一塁内野席前にある屋外ブルペンで投球していた。通常は室内ブルペンで準備する時間帯にもかかわらず、だ。黄色く染まった観客席、甲子園の熱気…。忘れかけていた空気をもう1度肌に染み込ませ、岩田が帰ってきた。

 5月11日ヤクルト戦で4回途中5失点KOされて以来、約2カ月半ぶりの1軍登板。苦手とする初回を無失点で切り抜け、勢いに乗った。無安打投球で迎えた5回1死、6番クラークに右越え先制ソロを献上。悔やまれるのはワンシーンだけだ。8回を2安打1四球1失点で4敗目。「試合は作れたけど、あの1球が…」と自らを責めたが、間違いなく復活を印象づけた。

 合言葉は「斎藤雅樹さん」だ。鳴尾浜でブルペン投球していた時、捕手役を務めた西口副寮長からヒントをもらった。「迫力がない!」。ブルペン捕手として長年、数えきれないボールを受けてきた大先輩の一言。何度も映像を見返し、原点を思い出した。「フォームがきれいになって、腕の位置が上がりすぎていた」。リリースポイントの位置が無意識に高くなった結果、投球時に顔の位置が三塁側にそれ、球の出所が見えやすくなっていた。

 もともと体が横回転するため、腕も横振りを意識するタイプ。腕の位置を下げたフォームを頭にたたき込むため、ウエートトレの最中にも「斎藤雅樹さん」と呪文のように唱えた。沢村賞に3度輝いた90年代巨人の大エース。子供のころにくぎ付けとなったスリークオーターをイメージした。「見た目は変わってないかもしれないけど」。数センチ、いや数ミリかもしれないが、この違いが復調のカギを握る。腕の位置を下げ、斜めに切れ込むスライダーが復調。140キロ中盤の直球にも力が乗るようになった。

 榎田が2軍再調整を余儀なくされ、先発ローテは5番手以降が流動的な状況。V奪回へ、まだ56試合ある。「次、頑張ります」。潜在能力の高い岩田の復活は、虎にとっては何よりの朗報だ。【佐井陽介】