<ヤクルト8-2広島>◇3日◇神宮

 とにかく負けない。ヤクルトの「ライアン」こと小川泰弘投手(23)が、広島相手に8回2失点で12勝目。1年目で先発ローテーションを守り、疲労困憊(こんぱい)。序盤から球が上ずるなど本調子ではない中、自身7連勝でチームの連敗を5で止めた。最下位に沈むチームで、貯金を1人で10もつくれているのはなぜか?

 この日の登板直前の調整法に勝てる秘密がかいま見えた。

 マウンドに上がる前、ライアンは自分の体と「対話」していた。神宮外苑での試合前練習で、「見えない疲労が絶対にある」との感覚を確かめるべく、20メートル走のタイム計測を求めた。結果は自分の平均2・5秒より遅く「体幹や下半身が使えていない」と分かった。すると腰にゴムチューブを巻き、後ろから引っ張ってもらった状態で20メートルを1本ダッシュした。先発当日の投手は軽めのランニング中心で備えることが多いだけに、珍しい光景といえた。

 だが、そこに明確な狙いがあった。菊地コンディショニング担当は「あれで全身のパワーを出してあげるんです」と説明した。小川は20メートル走でキレの悪さを確かめると、強めの負荷で全身に刺激を与え、疲労によって使えていなかった部位を目覚めさせようとした。

 登板当日にするのは初だった。それでも小川は「疲れる不安はなかった。それより体幹や下半身を使えていない方が嫌だった」と言った。その決断に同担当は「どうすればいいパフォーマンスができるか、コンディショニングの意識が高い。だから大丈夫でしょう」と太鼓判を押していた。

 序盤は球が高めに浮いた。初回はバレンティンの好返球で無失点にしのいだものの、2安打を許した。だが登板前の「ひと工夫」で、全身が早々と連動し始めた。4回には二塁走者としてミレッジの右前打で本塁に生還する激走も見せた。

 登板前の準備で、その影響も最小限に防げた。5回1死満塁のピンチでは、菊池と丸を直球で連続三振に仕留めて右拳を握りしめた。珍しいガッツポーズには「何でやっちゃったんだろうって思いました」と苦笑いしたが、「困ったときの内角真っすぐ。直球を信じた」とこれまで通りの力勝負を挑めたのは、全身が使えていたからこそ。8回に2失点こそしたが、最大のピンチでいつもの投球ができたのは、体からの「黄信号」に臨機応変に対応し、ベストの状態に近づけてマウンドに上がれていたからだった。【浜本卓也】