<巨人7-7DeNA>◇15日◇東京ドーム
これが主砲の極意だ。巨人阿部慎之助捕手(34)が、29号2ランで試合を振り出しに戻した。2点を追う8回裏2死二塁から、チームの敗色ムードを一蹴する1発を放った。先発沢村の黒星を消すだけではなく、DeNA中畑清監督(59)にとって就任2年目で初となる巨人戦のカード勝ち越しという悲願を打ち砕いた。延長12回、今季最長の4時間53分の熱戦を1歩も譲らず、今季5度目の引き分け。優勝マジックを1つ減らし33とした。
日本球界最強打者の“称号”だった。延長12回2死。走者はいない。打席に入った阿部が、バットを振ることは1度もなかった。DeNAバッテリーは敬遠して勝負を避けた。心境を問われた阿部は「わからないです」と、しながらも捕手の立場として「僕だったらカウントが悪くなったら歩かせるかもしれない」と続けた。スタンドのファンからは驚きによるどよめきと、ため息が入り交じった。
ここまで12度のサヨナラ打を誇る勝負強さに、相手がひるむのも無理はない。2点を追う8回2死二塁。「ストレートでまともにはこない。でも、あの1球だけは待ってみた」と、1ボールからの2球目の直球を一振りで捉えた。白木のバットを豪快に振り回し、起死回生の同点2ラン。高々と上がる打球を見ながら、淡々とダイヤモンドを一周した。
今季、先発した試合は全て4番に座ってきた。「巨人の4番=球界の4番」だと理解している。だから、野球の一番の醍醐味(だいごみ)とも言える本塁打を強く意識している。その意図は凡打の内容に顕著に現れている。今季は、ここまで三振を除く181度の凡打のうち、二ゴロ、一ゴロ、右飛の引っ張り方向は82度の凡打で全体の45・3%。一方、逆方向は51度の凡打で28・2%と大きく下回る。
阿部
セカンドゴロ、一塁方向への凡打は悪いとは思っていない。まずは、引っ張って強い打球を打たないと相手が怖くない。角度が少し上がればホームランでしょ。逆方向への軽打だけを狙ってもしょうがない。
逆方向への打球が、好調のバロメーターだという定説を覆す“主砲の発想”を持つ。この日も1打席目は二ゴロ、3打席は矢のような打球で一失を誘った。「相手に怖いと思わせることが、まずは大事」と、空振りも相手を威嚇するかのように強振も目立つ。
捕手として1500試合の先発出場の節目となった一戦。高校時代に甲子園で5打席連続敬遠にあった松井氏と、この日の阿部が少し重なって見えた。原監督も「見事ですね」と、主砲の活躍に目を細める。着々とマジックを減らす巨人の中心に陣取る、阿部の存在が、どんどん大きくなっていく。【為田聡史】



