<阪神2-1ヤクルト>◇16日◇京セラドーム大阪
絶体絶命の虎を安藤優也投手(35)が救った。同点で迎えた8回2死満塁、先発能見に代わって送り出された。打席には本塁打王バレンティン。このマウンドに上がりたい投手など、この世にいないだろう。だが、ベンチは幾多の修羅場を踏んできた、この男しかいないと判断し、安藤も恐怖と向き合った。
「あそこは逃げたら打たれるだけ。向かっていくしかない。気持ちのこもったボールを投げるしかない」
少しでも弱気になれば途端に押しつぶされてしまうような重圧。まるで1球、1球、魂を投げているようだった。カウント1-1からズバッと内角速球で追い込んだ。だが、相手はリーグ最強打者の1人。決め球のフォークをカットされ、見逃された。そして、フルカウントからの8球目。安藤はすべてをぶつけた。
「腕だけ振ろうと思っていた。相手もまっすぐとわかっているだろうから、ボール気味にしようとは思った。まっすぐなら(ボール球でも)振ってくると思ったから」
心を沸騰させながらも、頭の中で冷たい計算をはじくことができる。直球を投げる限り、押し出しのリスクは低いと読んだ。これが経験の力だ。内角高めの速球、明らかなボール球にカリブの怪人のバットは空を切った。ガッツポーズの安藤と、バットをたたきつけて悔しがるバレンティン。このコントラストがそのまま両軍の勝敗となった。
己のありったけを出し切った安藤、魂の8球-。見ている者の心を揺さぶった鬼気迫る勝負が、サヨナラの歓喜を生んだ。【鈴木忠平】



