<阪神2-3中日>◇11日◇甲子園

 タケシの気迫勝ちだ!

 今季限りで現役を引退する中日山崎武司内野手(44)が“顔”で決勝点をもぎ取った。2点差を追いつき、なおも8回2死満塁の大チャンスで代打として登場。阪神安藤の直球が左手首を直撃。体を張ったこの得点が試合を決める1点になった。CS出場を争う3位広島も勝ったため、2・5ゲーム差は変わらず。最後まで44歳の闘争心は消えそうにない。

 勝利の立役者は、歯を食いしばり苦笑いを浮かべた。2-2、8回2死満塁。最高の場面で打席に送り出されたのは、現役引退へカウントダウンを迎えた山崎だった。初球の内角直球を豪快に空振り。続く2球目が左手首に鈍い音とともにぶつかったのだ。静まりかえった甲子園。三塁走者が決勝のホームを踏んだ。

 山崎らしい豪快なアーチ、痛烈なヒットとはならなかったが、体を張った1点は意味のある決勝点。引退表明後、初打点だった。

 ベンチ裏から照れくさそうに出てきたヒーローは「自分に酔ったらいいことあるわ。ガッハハ」と豪快に笑い飛ばすと、「形としてはあの1点で勝てたから良かった」と納得顔を浮かべた。

 不思議な巡り合わせだった。直前の7回には阪神にも同じような場面があった。1死満塁から引退を表明している桧山が代打で打席に立ち、押し出しの死球。1学年下の後輩と重なるようなシーンに山崎も「ヒーヤンと一緒だな。どっちが価値がある(死球)かになっちゃったね」と笑った。

 前日10日の練習前には桧山から「最後まで頑張りましょうよ」と握手を求められ、グラウンドで燃え尽きることを誓い合ったばかりだった。

 この日の高木監督の第一声は「よう勝ったやん」。終盤に先制点を奪われてからの逆転勝ちに「どことやっても負けれん。今日の勝ちは大きい」とご満悦だ。勝負どころでの代打山崎についても「あそこは丈夫なのを出したんや。シュートで攻めてくるからね」と、冗談っぽくニヤリ。負けていれば、CSが大きく遠のくところで勝ちを拾った。

 山崎は「技術なんか変わりっこないんだから、あとは気持ちを上げて、あと18試合を乗り越えたい」。現役フィナーレを迎えたベテランの言葉が、チームの道しるべになる。【桝井聡】