<ヤクルト2-3阪神>◇13日◇神宮

 バレを封じて連敗もストップ!

 腰痛から復帰した阪神の先発ジェイソン・スタンリッジ投手(34)が、シーズン本塁打の日本記録更新がかかるヤクルト・バレンティンを封じ、6回2失点で8勝目だ。神宮球場は56号を期待する観客で約3万人が詰めかけるフィーバーぶり。引き立て役になるものか-。意地を見せた虎が1週間ぶりの白星を手に、勝利の六甲おろしを響かせた。

 力と力でぶつかり合った。新記録に王手をかけるバレンティンがフルスイングすれば、迎え撃つスタンリッジもこん身のストレートをぶつけた。147、150と、スピードは1球ごとに増した。最後は、捕手清水が構えたミットとは逆の内角高めに切れ込んだ最速152キロで空振り三振!

 しびれる対決を力で制した。

 3回だった。2死二塁から川端を歩かせ、逃げ道のない状況で主砲を迎えた。1球ごとに球場全体から歓声が沸き起こる。今こそ、その瞬間とアーチを望む空気に包まれた。しかし、右腕も意地がある。

 「56号を打たれるのは嫌です。でも、そうなるとも限らないのに、攻めないのは理解できない」

 眼前での新記録達成は、真っ向勝負で阻止した。前日12日、「彼はノーチャンスだ」と豪語した右腕は、バレンティンとの3度の対戦で、すべて直球で凡退させた。

 「楽しんで投げたよ。逃げることは考えていなかった。真っすぐが一番いいボールだったんで、投げていったよ。56号を打たれなくて良かったです」

 有言実行を果たし、ホッと胸をなで下ろした。

 同じ助っ人として、日本でのプレーになじむ大変さを知る。だから、敵の記録にも真正面から立ち向かう。今季途中、旧知の間柄であるボイヤーが加入した。“先輩”は、練習時から気にかけ、プライベートでも食事に連れ出すなど、サポートに努めた。「ぼくが日本に来たときも、みんながそうやってくれたからね。ボイヤーにも早くなじんで、プレーに集中してもらいたいから」。自身がソフトバンクに入団した07年には、先に入団したガトームソンらがいた。日本で成功した背景に、助っ人同士の支え合いもあった。

 だからこそ、バレンティンの記録には「必ず記録は抜くだろう」と敬意を込めていた。初対戦した11年5月1日に甲子園で右越え本塁打を許すなど、通算8打数4安打と打ち込まれていたが、今季初対戦ではきっちりと封じ込めた。

 苦しい展開ではあった。6回には自らのけん制暴投などで同点。直後の7回は自身の安打から、勝ち越し点を生んだ。苦しみながらも、きっちりと6回2失点で試合をつくり、8勝目を挙げた。前回登板予定だった3日DeNA戦は、前日に腰の張りを訴え回避。出場選手登録抹消期間を含む、中16日のマウンドも「うまくまとめることができた」。攻めて、勝ち取った勝利。CSでも柱となるべき存在の復活は、虎にとって心強い。【山本大地】

 ▼阪神はバレンティンを4打席凡退と抑え込んだ。バレンティンは8月7日中日戦(ナゴヤドーム)から9月12日広島戦(神宮)まで29試合連続出塁。この期間中17本塁打に加え、勝負を避けられ四球も29あったが、阪神バッテリーが30試合ぶりに出塁もさせず完勝した。