<阪神7-7ヤクルト>◇21日◇甲子園

 何度もまばたきした。ヤクルト藤本敦士内野手(35)は7回1死二塁で代打で登場。通算1000試合出場を達成し、古巣の阪神ファンからも大歓声を受けた。「しっかり聞こう」と打席手前で立ち止まると涙が浮かんできた。「グッとくるものがあった」。打席に入ると、右翼席から阪神時代の応援歌が流れてきた。「ありがたかった。泣くと(視界が)ぼやけるから」と必死でまばたきし、こらえた。中飛に終わったが拍手が鳴り響いた。

 09年オフにヤクルトにFA移籍するまでの9年間、甲子園が本拠地だった。「大歓声と厳しい声の中でできたから成長できた」と言う思い出の地だ。小川監督は「甲子園で1000試合を達成させたい」と、直前のDeNA戦で1軍昇格させると2試合に出場させ、残り1で甲子園という粋な計らいを見せた。

 その思いに応えようと、「出るからには役に立ちたい」とストライクゾーンは全て振った。悩まされ続けた腰痛は治まらず、全盛期のスイングとは言えなかった。それでも「悔いはないです」と胸を張った。

 試合前には同じく今季限りで引退する宮本と一緒に、阪神鳥谷と関本から花束をもらった。7回表終了時には記録達成の花束が贈呈された。「これで甲子園は最後です」。涙は乾き、すっきりした表情で古巣に別れを告げた。【浜本卓也】

 ▼1000試合出場=藤本(ヤクルト)

 21日の阪神21回戦(甲子園)の7回、代打で出場して達成。プロ野球459人目。初出場は、阪神時代の01年4月14日の中日2回戦(ナゴヤドーム)。