阪神が、あす12日に初戦を迎える広島とのCSへ向けて異例の“全員バント練習”を行った。甲子園での全体練習、シート打撃では西岡、鳥谷、新井、福留ら主力選手が犠打特訓。エース前田健ら投手力が自慢の広島とは僅差での勝負が予想される。短期決戦でより重要になる“1点”へのこだわりを再確認した。

 CSへ向けた全体練習再開の日、和田監督が全員を集めて訓示したところからスタートした。打倒巨人、日本一への再挑戦の始まりだ。その中で、首脳陣の狙いがはっきりとわかる練習が行われた。

 シート打撃の形式で行われた実戦練習では一部裏方が守備に就き、二神、伊藤和、松田という広島先発陣を想定したような右腕3人に対し、主力野手らが打席に立った。ただ、普通のシート打撃と違うのはすべて走者を設定し、それを進める練習だったこと。福留が、鳥谷が、そして新井までがバントでボールを転がした。

 「ああいうのはやっておかんと、あかん。(試合で)ああいうのをさせることもあるからな」。水谷実雄コーチ(65)はCS用の練習だったということを明かした。また、山脇光治コーチ(50)は「だれにでも(バントが)あるということ。打ち合いにはならんやろうからな」と説明した。今季は西岡や、クリーンアップに送りバントを命じることはほとんどなく、8月16日ヤクルト戦(京セラドーム大阪)で同点の9回無死一、二塁で鳥谷が犠打を決めた程度だ。1点の重みが増す超短期決戦では聖域も例外ない。だれにでも犠打のサインが出るという意思表示だった。

 能見や、メッセンジャー、藤浪にはスクイズのサインもあった。さらには広島のお株を奪うような2ランスクイズが完成する場面も…。2時間30分の練習中、この実戦バント練習に約1時間を割いた。今季の甲子園での1試合平均得点は約3・6点、同失点は約3・5点。ましてや安定した先発陣を武器とする広島が相手だけに、なおさら接戦を想定しての確認だったようだ。

 今季、犠打ゼロの新井貴浩内野手(36)は「準備だよ。準備するということ」と表情を引き締めた。全員で1点をもぎ取る姿勢を確認した。過去、セ・リーグのCS初戦を制したチームの勝率は8割超。先手必勝-。超短期決戦を前に、緊迫感が増してきた。【鈴木忠平】

 ▼今季阪神での最多犠打は大和の35回。菊池(広島)の50回に次ぐリーグ2位だった。俊介16回、藤井彰15回と続き主軸では鳥谷の1回だけでマートン、西岡、新井はゼロ。投手ではメッセンジャーの7回がトップ。藤浪は5回で4月14日DeNA戦(甲子園)ではプロ初のスクイズを決めている。