<セCSファーストステージ:阪神1-8広島>◇第1戦◇12日◇甲子園
コイの勢いが止まらない!
広島がエース前田健太投手(25)の投打の活躍で、CSファーストステージ突破に王手をかけた。阪神打線を7回5安打1失点。打っては5回先頭で右前打を放ち、キラ・カアイフエ内野手(29)の勝ち越し3ランを呼び込んだ。8-1の圧勝劇で勢いは加速。一気に第1関門を突き抜ける。
いつもとは違う甲子園の表情に勇気が湧いた。前田健はグラウンドに出て驚いた。「いつもは声もかき消される。シーズンと一緒なら寂しいと思っていた」。目にした光景は想像を超えていた。いつもは真っ黄色の三塁側から左翼スタンドが、赤く塗りつぶされた。
「久々に気持ち良く投げられた。久しぶりの短期決戦で、WBCぐらいの緊張感で、気持ちの入った投球ができた」
1回西岡への初球で、ブルペンで抱いていた不安を振り払った。151キロの直球で空振りを奪い、「今日もいける」と確信した。1巡目はスライダーを軸に、2巡目からはカーブを解禁し、チェンジアップとのコンビネーションで翻弄(ほんろう)。7回に野村監督からマウンドで直接、「この回まで頼む」と告げられた。2死一、三塁となり、日高をチェンジアップで投ゴロに打ち取ると、2度のガッツポーズだ。右手中指に血マメができても、腰に張りが出ても、7回5安打1失点。ファーストステージ突破に王手をかける大きな1勝をもたらした。
投げ合う相手はルーキー藤浪。プライベートでも親交のある後輩との投げ合いにも「特に何も思わなかった」。5回の先頭では、藤浪の外角135キロカットボールを右前に運ぶ、CS初安打をマーク。キラの3ランで決勝のホームを踏んだ。
3日、前田智の引退試合でのことだ。試合後のセレモニーで花束を贈呈した前田健は、主役よりも先に大泣きした。越えなければならない壁だった。「絶対的な存在だったので、結果を出さないとファンにも認識してもらえないと思っていた」。入団時から同姓の偉大な先輩がいることに、プレッシャーを感じていた。投手と野手の違いがあるとはいえ、背中を追いかけた。キャンプで対戦すれば、打者目線で投球を分析してもらった。
今や、前田ではなく「マエケン」として球界のトップに君臨する。実績を重ね、新たな地位を確立した。初出場した今春WBCで自信を手にし、チームを初のCSに押し上げた。そして、晴れ舞台で初勝利。マエケンが広島の歴史に、新たな1ページを書き加えた。【鎌田真一郎】
▼前田健がポストシーズン初登板を白星で飾った。これまで広島は日本シリーズに6度出場しているが、<1>戦に勝利は84年阪急戦に次いで2度目。84年の勝利投手はリリーフの小林で、ポストシーズンで<1>戦の先発投手が白星は球団史上初めてだ。前田健は打っても2安打。プレーオフ、CSで投手の1試合2安打は、73年<2>戦山田(阪急)07年2S<2>戦川上(中日)09年2S<2>戦オビスポ(巨人)12年ファイナルS<2>戦伊藤(中日)に次いで5人目。過去4人とも「白星+2安打」と投打に活躍したが、<1>戦では初めてだった。



