<セCSファーストステージ:阪神1-8広島>◇第1戦◇12日◇甲子園

 阪神藤浪晋太郎投手(19)が1発に沈んだ。高卒新人では史上初となるポストシーズンのシリーズ初戦先発を任された。

 キラの一撃は右翼席に伸び、そして、消えていった。打ち取れば0が刻まれるはずだった5回表の得点欄に3が光った。藤浪は両手を両膝について肩を落とした。背番号19が天を向く。広島前田健相手に、あまりにも重いビハインド。舞台の大きさもすべて、19歳にはわかっていた。

 「情けないピッチングをしてしまった。それだけです」

 試合前の先発発表で、スタンドはどよめいた。3年ぶりCSの初戦で、相手はマエケン。11勝能見、12勝メッセンジャーと左右の軸が予想されたが、覆った。高卒新人史上初となるポストシーズン初戦の大役を、藤浪は託された。

 告げられたのは、シーズン最終登板の5日巨人戦以降だった。開幕ローテーションをほぼ1年守り、10勝6敗の数字を残して駆け抜けた。激動の1年、その最後に託された、最大とも言える任務。「しっかり投げないといけない」。ルーキーの心にまた強い自覚が芽生えた。12日の本番まで、万全を期した先発隠しもあった。キャリアも実績も上の先輩たちが「初戦藤浪」を隠そうと、懸命の演技をしてくれた。これまでにない緊張感に包まれた練習風景。日を追うごとに、ことの重大さを思い知った。

 勝たなければならない使命感。これまでは、重圧を力に変えてきた。チームは広島前田健に今季1勝4敗と分が悪かったが、唯一の勝利を挙げたのが藤浪だった。何かをやってくれる。どよめきの後、期待感が甲子園を包んでいた。応えるように、先頭丸を見逃し三振に斬ると、一、二塁のピンチでキラを見逃し三振。2、3回はテンポよく3者凡退だ。4回に3連打で1点を先制されながら最少失点に食い止める。直後に味方が追いついた。日本を代表するエースと互角に渡り合い、希望を抱かせた。

 5回のつまずきは先頭前田健に右前打されたのが始まりだった。1死一、二塁で3番梵からは会心の空振り三振を奪う。続くキラの3球目、スライダーが甘く入った。「ど真ん中でした。失投です」。打った瞬間、いや、藤浪自身は投げた瞬間に分かっていた。

 あと1敗で今季が終わる。土俵際に立たされたが、まだ戦いは終わっていない。藤浪はただ、信じて待つ。「次の登板があることを信じて、しっかり調整したい」。歴史的な挑戦を、それだけに大きすぎる挫折を、無駄にしてはいけない。【山本大地】