中日落合博満GM(59)が15日、海外FA権を保持している森野将彦内野手(35)と電撃残留交渉を行った。谷繁元信捕手兼任監督(42)、森繁和ヘッドコーチ(58)の“トロイカ”がナゴヤ球場に集結し、ナインと初顔合わせを行った新体制の初日。流出の可能性がある主軸と、1時間に及ぶアポなし交渉で誠意を伝えた。谷繁兼任監督も所信表明。19日からフェニックスリーグの視察を明言するなど、NEW中日がホットに始動した。

 森野はナゴヤ球場で練習後、隣接する寮の一室に呼ばれた。待っていたのは何と元監督、落合GMだった。「来年もドラゴンズでやってほしい」。突然のオレ流残留ラブコールだった。

 森野は今季が5年契約の最終年。FA権を取得している中日野手の中では、もっとも市場に出回る可能性が高い選手だ。落合GMはその状況を敏感に察知し、即行動した。それもGM就任後、森野との初めての対面、しかもアポなしでだ。すべては森野をV奪回の中心選手と考え、流出させてはいけないという危機感の表れ。落合GMは「話をしただけだ。必要戦力だから」とサラリと言ったが、交渉は1時間に及んだ。

 森野も直々に示された誠意に感激だった。「大人の話です。球団として、残ってほしいと言われました。当然うれしいし、また話をすることもあると思います」。この日は条件面などの提示はなく、態度は明確にしなかった。だが森野にとって落合GMは、前回監督を務めた8年間に何度も指導を受けた師匠的な存在だ。普段個人名を出さない監督が「森野だよ、森野!

 森野!」と何度も奮起を促し、攻守に向上させてもらって今がある。そのハートには、残留のくさびがしっかり打ち込まれたようだ。

 落合GMは、同じくFA権を持つ中田賢との交渉にも出馬を予定。監督時代はFA権取得組について「慰留しない」スタンスを徹底。「引き留める権限は監督にはない。必要な選手だけどそれは選手の権利」と、メジャーに挑戦した福留や川上らと残留交渉は持たなかった。だが監督に戦力を与える側のGMに立場が変わった今、FA選手への対応は180度変わった。

 この日は谷繁監督、森ヘッドとのトロイカが初めてそろった。組閣や現有戦力の分析、補強などで5時間に及ぶ3者会談を行い、意見交換も行った。落合GMは「今日決まったのは、11月1日から練習(キャンプ)をするということだけだよ」とかわしたが、表情は気合十分。新体制初日から、オレ流改革が音を立てて動きだした。【松井清員】