<セCSファイナルステージ:巨人3-0広島>◇第2戦◇17日◇東京ドーム

 崖っぷちに追い詰められた。広島前田健太投手(25)が1発に泣いた。3回1死一、二塁から2番寺内に決勝3ランを浴びた。失点はこの1発のみだが、5回4安打3失点で降板。打線も菅野の前に、8回まで1安打投球を許した。9回に1死満塁まで攻め立てたがホームは踏めなかった。連敗で王手をかけられ、前田健はスクランブル登板も辞さない構え。総力戦で、奇跡の下克上を起こす。

 伏兵の1発に泣いた。3回1死一、二塁。前田健は寺内を3球で追い込んだ。4球目は勝負のスライダー。「曲がりがあまりよくなかった」と振り返る1球を、無情にも真っ赤に染まる左翼スタンドに運ばれた。痛恨の先制3ラン。エースはマウンド上で苦渋の表情を浮かべた。6回に代打を送られた。5回4安打3失点と、先発の仕事を果たせず。巨人に王手をかけられてしまった。

 12日のファーストステージ初戦から中4日の登板だった。その際、右手中指の血豆を悪化させるアクシデントにも見舞われた。だが「結果がすべて。万全かどうこうは、関係ない。勝つか負けるか」と言い訳は一切しなかった。

 9月以降は中4日の登板を解禁し、発熱しながら登板した試合もあった。フル回転してきたエースを野村監督も「この1カ月半、無理をしてきてもらった。気持ちは120%入っていた。責められない」とかばった。

 肉体的にも精神的にもギリギリのところで戦っている。蓄積した疲労を、少しでも軽減しようと、つかの間のリフレッシュをしていた。ファーストステージを勝ち抜いた翌14日は、早朝の始発新幹線で神戸から東京に移動。カバンには、9月に生まれたばかりの愛娘へのプレゼントを忍ばせていた。ファーストステージ初戦のウイニングボールだ。CS初勝利を挙げた12日は、長女が誕生して1カ月の記念日。その笑顔に癒やされ、また、うれしい報告をするはずだったのだが…。

 屈辱を味わってなお、まだファイティングポーズを取り続けた。当初は中3日で第6戦の先発が想定されたが、もう1敗も許されない窮地となり、中継ぎでスクランブル登板する可能性もある。「言われたところで投げるだけ。厳しいですが、最後まで何があるか分からない」。中継ぎ登板はプロ7年間で08年5月16日巨人戦の1度だけだ。

 それでもなりふり構ってはいられない。指揮官も「うちはいつも総力戦」と再確認。22年ぶりの日本シリーズ進出の可能性は、わずかに残されている。崖っぷちからの逆襲に、いちるの望みを託す。【鎌田真一郎】