もう迷わない!

 広島堂林翔太内野手(22)が3日、宮崎・日南市内の天福球場でキャンプ1号をたたき込んだ。フリー打撃で左腕戸田と対戦し、内角直球をライナーで左翼席まで届かせた。昨季は8月に左第3中手骨を骨折してシーズン終了。今季は持ち味のフルスイングにこだわり、あくまで本職三塁のレギュラー再奪取を狙う。

 気温22度の汗ばむ陽気。のどかな青空に不釣り合いな弾丸ライナーが、左翼席芝生をえぐった。キャンプ1号だ。決して大振りではない。だからこそ、進化がうかがえる。それでも堂林は納得しない。

 「もうちょっと、きれいな打球が行けば良かったんですけどね。打球にドライブがかかっていた。今、満足すると、先がない。もっとこだわってやっていく」

 妥協なき姿勢を貫くが、進化を証明する1発。昨秋から軸足側に体重、頭を残したまま振り抜くフォームに挑戦中。オフは先輩東出にチェックをお願いしてまで、コツコツ形を固めてきた。この日の1発も左腕戸田の内角直球に対し、軸足に体重を乗せて放った。

 「去年は右打ちとかやりながら打率が落ちてしまった。今年は自分の持ち味を消さないようにしないと。原点は『振れる』というところだから」

 12年にチーム最多の14本塁打を放った若武者も昨季は6本塁打どまり。確実性を求めたにもかかわらず、打率は2割4分2厘から2割1分7厘に落ちた。8月に左第3中手骨を骨折してシーズン終了。苦悩した1年を繰り返したくはない。

 「もうケガでじっとしているのは嫌。フォームは秋の課題に取り組んでいるだけ。変えるつもりもない」

 前日うれしい出来事があった。昨季終盤にリハビリを共にして、昨季限りで現役引退した前田智徳氏がキャンプ地を訪問。「左足が伸び上らないように」とあらためて指摘された一方で「1本だけ、いい打ち方があった」とも言われた。

 「去年から体の左側をうまく使えていないと言われてきた。言ってもらった1本はちゃんとビデオで確認しましたよ」

 方向性は間違っていないと実感できた。「去年と比べて振れているし、バランスもいい」。午後5時過ぎ。チーム最後尾で球場を去る直前「まだ3日目なのに腰がパンパンですよ」と話す堂林の表情は、うれしそうだった。【佐井陽介】