<オープン戦:巨人3-2楽天>◇23日◇沖縄セルラー那覇

 プロ仕様のスライダーで、実戦デビューを鮮やかに飾った。楽天のドラフト1位松井裕樹投手(18=桐光学園)が先発。対外試合初登板で2回を無安打無失点、2奪三振と完璧に抑えた。高校時代は決め球として使っていたスライダーを、この日はストライクを取るカウント球としても使用。この1週間、ブルペンで練習してきた3球で打者を追い込む投球術を実践してみせた。

 松井裕のスライダーは巨人にも通用した。1回、先頭の坂本を追い込んでからの5球目。これしかない。そう確信するように嶋のサインに首を振った。「インコースのサインだったので」と自らが最も信用するボールを全力で投げた。手元で落ちるワンバウンドのスライダーにバットが空を切る。スタジアムがどっと沸いた。プロで初めて対戦した打者から奪った三振に硬かった表情が少しだけ和らいだ。

 登板前から緊張はピークに達していた。「昨日はよく寝られました」と話したが、やはり力が入った。投球練習の5球目。クイックモーションで投げた直球がすっぽ抜けた。「ガシャーン!」とバックネットの金網を直撃。1万4282人の観客をざわつかせたが「あれで力まないように意識したので逆に良かった」と平常心を取り戻した。

 打者6人をわずか25球。久米島キャンプから取り組んだ成果を発揮した。「2球でカウント1ボール1ストライクを作る。3球で追い込むのを意識しました」と振り返る。この1週間、佐藤投手コーチから変化球でストライクを取る意識を徹底された。「キレの良い球でもボールなら意味がない!俺は振らないよ!」とブルペンの後ろから注意され続けた。高校生なら振るワンバウンドの球をプロは振らない。右打者の外角からストライクゾーンに入る球を練習し続けた。

 2回の先頭打者、村田への投球が「プロ松井裕」だった。2球目と3球目。ファウルを含め、スライダーでストライクを取った。「ブルペンから調子が良かった。うまくストライクを取れると思って」と三振を奪うのではなく、打者を追い込む球としてテンポよく投げ込んだ。最後も高校時代の決め球と違い、ワンバウンドのチェンジアップで三振に仕留めるなど、プロでの進化を感じさせた。

 左腕はプロの統一球をアマ時代のボールに比べ「ぺったりする」と表現し、「変化球を抜く感覚が微妙」と話す。それでも球を受けてきた嶋から「スライダーと直球の腕の振りが全く一緒」と評価を受ける。変わらない腕の振りから放たれる、成長したスライダー。「終わってホッとしました」と初々しい笑顔の裏に、大きな一歩があった。【島根純】