<オープン戦:中日4-2阪神>◇23日◇北谷

 初白星の立役者は伏兵だった。中日谷繁元信兼任監督(43)がオープン戦の監督初白星を手にした。2軍から駆けつけた福田永将内野手(25)が途中出場から3安打2打点と打線を引っ張り、逆転勝利。ウイニングボールを受け取った指揮官は「未完の大砲」を称賛した。崖っぷちのプロ8年目。竜のフクちゃんが新生チームの秘密兵器になる!

 意外な人物が、新指揮官にオープン戦初勝利をプレゼントした。2-2同点に追いついた5回2死一、三塁。途中出場の福田はフルカウントから阪神小嶋の直球に反応した。力強いスイングでつかまえた打球は、低い弾道で左翼フェンスにぶち当たった。2点適時二塁打が決勝打となった。

 竜のフクちゃんは3打数3安打と大当たりだった。小笠原の代打で立った4回にカーブに食らいつき右前打。7回には鮮やかな左前打と、いとも簡単に右へ左へ打ち分けた。18日巨人戦でも1発を放つなどノリノリ。それでも「もう立場とか考えずに必死にやるだけです」と気持ちは土壇場だ。

 強豪・横浜のキャンプテンとして06年センバツで日本一になった男も、もうプロ8年目。強打の捕手として入団したはずが内野手→捕手→内野手と3度のコンバートを経て内野手に落ち着いた。プロ通算本塁打は4発。昨季はわずか4試合出場に終わった。弱肉強食のプロの世界で、瀬戸際に追い込まれていた。

 昨年の秋季キャンプで、打撃を見つめ直した。「考え方から変えました」と新首脳陣とともに一から作り直している途中だ。2軍読谷キャンプでは福田が「むちゃくちゃ熱い」と苦笑いする佐伯2軍監督のもと、毎日のように午後8時半までバットを振る。「スイングの数?

 去年の8倍です」と笑うしかないくらいの練習漬けだった。

 この日朝に2軍から呼び寄せたばかり。苦労人の躍動を喜んだのは、記念球を手にした青年監督だ。主力をズラリと並べた阪神を相手に、試合中盤に松井雅、平田、谷、そして福田がつないで逆転。松井雅からウイニングボールを受け取った谷繁兼任監督は「別にいいって言ってるのに。飾る?

 そうさせていただきます」と豪快に笑った。ヒーロー福田の3安打には「秋から試行錯誤して振り込んできた結果」と目を細めた。埋もれていた戦力が、大きな力になるかもしれない。【桝井聡】