<オープン戦:ソフトバンク8-4日本ハム>◇19日◇ヤフオクドーム

 今年は打率4割超の打てる捕手がいる!

 ソフトバンク鶴岡慎也捕手(32)が古巣日本ハム戦で決勝打を放った。2-3の4回無死満塁。木佐貫から左翼線へ2点適時二塁打を運んだ。2打数1安打2打点。4割2分9厘を誇る8番打者が切れ目のない打線を支え、チームは77年南海が記録したオープン戦11連勝に並んだ。

 脳裏にある軌道をトレースするような獲物がやってきた。「木佐貫さんがオリックスにいた時も対戦していて、軌道のイメージはできていた」。木佐貫の初球。内角に食い込むシュートだった。鶴岡は迷いなく引っ張り、左翼線へ運んだ。「シーズンにとっておきたかったヒット」という会心の一打。2-3の4回無死満塁。この2点タイムリー二塁打で逆転し、試合は一気にソフトバンクへと傾いた。

 オフにFA移籍し、巡ってきた古巣との2連戦。試合前に栗山監督から「けがせずいいシーズンにしよう」と声をかけられ、胸に複雑な思いもあった。ただ初戦は「紅白戦みたいな感じ」ながら、先発したこの日は「敵として」と雑念を断ちきった。木佐貫とは同じ鹿児島県出身で高校時代から対戦した上、昨年は22試合でバッテリーを組んだ。赤田らも交えた「県人会」で芋焼酎を何度も飲み交わした。「シュート、フォークの投手ですからね」。勝手知ったる相手を読み切り、秋山監督の口からは賛辞の言葉が続いた。「シュート狙い打ち、うまかったね。読みがいいんだろう。読みだけでなく技術も必要だろうけどね」。

 オフの補強の軸は4番李大浩ながら、鶴岡の加入効果が日増しに目立ってきた。2打数1安打2打点で、打率は4割2分9厘に達する。昨年ソフトバンクのポジション別打率で捕手は2割2厘。ウイークポイントを補える期待が強まったきた。鶴岡は捕手目線で自軍の打線を分析し、役割をはっきり認識している。

 「僕がこの打線を相手にすると、捕手のところでアウトを取ろうと思うので、アウトを取らせない、いかに後ろをつなぐかを考えますね」

 相手投手にとって7番柳田の背後に、4割を超える捕手が控えてる事実はやっかい。李大浩の存在だけでなく、切れ目のなくなる打線そのものが脅威になる。さらに鶴岡が「点数が入ると僕が捕手をしていると楽になる」と話すように、投手陣も楽にする。チーム全体への波及効果は大きい。

 これで77年南海時代に記録したオープン戦11連勝に並んだ。「なーに言うてるの。オープン戦だよ」。指揮官の軽い受け流しと対照的に、チームの勢いに止まる気配がない。【押谷謙爾】

 ▼ソフトバンクが37年ぶり2度目のオープン戦11連勝を飾った。南海時代の77年3月6日の中日戦~同21日の大洋戦で11連勝。同年の南海のオープン戦成績は19戦13勝4敗2分けで1位だった。なお70年以降のオープン戦の最多連勝は70年近鉄、80年巨人の12連勝。また公式戦での最多連勝のプロ野球記録は54年南海、60年大毎の18連勝。