<日本ハム5-2楽天>◇9日◇札幌ドーム

 日本ハムの高卒3年目右腕、上沢直之投手(20)が開幕から2連勝を飾った。2回に3安打で先制されたが、そこから立ち直り、3回から3イニングは3者凡退に打ち取った。5回2/3を8安打2失点に抑え、楽天のドラフト1位ルーキー松井裕との投げ合いを制した。

 大役を果たしても達成感はまだ先にあった。日本ハム上沢が5連敗中のチームを救う好投で価値ある勝利を手にした。2回に先制を許したが、3回以降の3イニングは3者凡退で攻撃のリズムをつくった。6回にプロ初被弾を浴び、2死満塁のピンチを招いて降板。「ゲームを壊さなかったんですけど、課題が残る投球になった」。本拠地初登板初白星で1軍デビューから2連勝。それでも伸び盛りの救世主は満足していなかった。

 ヒーローの座を奪った。楽天先発は注目度抜群のルーキー松井裕。序盤に失点し1歩リードされたが、逆転の援護もあり主役の座が舞い込んできた。「先に降りたくないというのは僕の中ではありました。境遇は全く違う。僕は下(2軍)から、どんどんいっている」。プロ3年目でつかんだ先発ローテーションの一角。1年目の新人には負けられない意地があった。

 使命感の強さは折り紙付きだ。専大松戸2年の10年、秋季千葉県大会3回戦の相手は「因縁」の習志野だった。35年前の75年夏の甲子園準々決勝。父和也さん(54)の母校、福島・磐城がヤクルト小川監督がエースの習志野に0-16で敗れていた。「あの時はおやじから『絶対打たせるな』って言われました」。父の無念を背負い1-0の完封勝利で敵討ちした。頼もしい20歳の背中が、またひと回り大きくなった。【田中彩友美】