<中日2-3巨人>◇5日◇ナゴヤドーム
じいちゃん、勝ったよ-。巨人菅野智之投手(24)が、祖父である原貢氏(79=東海大系列野球部顧問)の急病に屈せず6勝目を挙げた。貢氏は4日夕、心筋梗塞(こうそく)と大動脈解離を併発し、神奈川県内の病院に入院した。息子の原辰徳監督(55)は5日朝、中日戦の指揮を川相ヘッドコーチに託し、名古屋から帰京した。菅野は有事の中、要所で力勝負を選択。マウンドから最高の孝行を届けた。
マウンドに向かう数時間前、菅野は貢氏の一報を受けた。重い心臓の病だった。「今朝知った。気を使って連絡してこなかったんでしょう」と家族の気配りが染みた。普通でいられるはずもなかった。2回までに2失点した。「開幕して一番、調子は良くなかった」と認めてから奮い立った。
「変なピッチングをしたら、じいちゃんに怒られる」と鬼気迫った。3回から6回まで、3アウト目をすべて三振で中日を断った。カットボールとカーブを配しながら最後は、阿部のサインに首を振ってでも、武骨に真っすぐで通した。6回。和田を空振りに仕留めたアウトロー145キロ。「勝負どころでいい球がいった」。下を向いて珍しく、声にならない声でほえた。
じいちゃんの教えを守った。菅野は昔も今も、貢じいちゃんが大好きだった。5歳の時、家の庭で初めてキャッチボールをした。記念すべき野球との出会いは1球目、いきなり顔にボールをぶつけられて、鼻血が出て大泣きだった。「ボールは当たると痛い、と教わりました。1球も投げ返さずに、泣きながら家に帰りました。でも何日かたって、自分からまた、じいちゃんの家に行きました」。ここからのめり込んだ。
貢氏
俺は頼んでない。智之がやりたいんだったら教えてやる。自分で決めて、自分でやるんだ。
1球の怖さと決断の大切さを授かった。外角低めに執拗(しつよう)に集めた直球に、じいちゃんとの原風景が宿った。
直球で押すしかなかった。東京ドームで投げる日は、いつも応援に来てくれた。新人の春、早々に「そもそも本格派。変化球でかわしすぎだ」と厳しく言われ、磨き上げた武器だった。菅野は「大事な時期だと思う」と少ししゅんとしたが、同時に「個人のこと。個人のことで、迷惑は掛けられない」とも言った。じいちゃんにもらった強さを、今度は孫が返す。名古屋で勝った菅野は見舞いに直行した。【宮下敬至】
◆大動脈解離と心筋梗塞
大動脈解離とは血管壁が裂ける疾患。心臓から全身に血液を送る大動脈の壁の一部に亀裂が入り、そこから血液が流れ込んで壁が二層に裂ける状態をいう。動脈硬化や高血圧に起因することが多く、胸や背中に激痛を伴う。発症して24時間後の死亡率は50%と言われる。血管の流れが悪化すると、心筋梗塞を合併することがある。心筋梗塞は、心筋が酸欠状態に陥る虚血性心疾患の1つで、血液の流れが止まる状態。生活習慣病の代表格として知られる。



