<ロッテ8-3阪神>◇11日◇QVCマリン

 ピンチに強い阪神藤浪晋太郎投手(20)が、雨の千葉で落下した。3回2死二、三塁。あと1死でチェンジのところから四球、死球で失点し、今江に2点打と計3失点。試合をつくれず5回4失点で4敗目を喫した。これで交流戦は5つの負け越し。最大9まで貯めた貯金を1に減らす散財っぷりだ。

 帽子をとって謝る藤浪に、大雨が容赦なく打ち付ける。3回2死満塁。5番角中にカウント0-2と追い込んでからボールを2球続けた。粘られて7球目。137キロ変化球が引っかかりすぎた。左すねのユニホームをかすめる、まさかの押し出し死球。「厳しいところを狙ったんですがもったいなかった」とぼうぜんと立ちつくした。

 「(雨は)言い訳にはならない。投げにくいのは事実ですが、粘りきれなかった結果です」

 ゲーム開催が危ぶまれる降水確率だった。試合直前までマウンドにはシートが敷かれた。名物の風は常時2~3メートル。「風とかいろんな要素があると思うので気をつけたい」と話していた藤浪の敵は風ではなく、やまない雨だった。押し出し死球に続き、6番今江にレフトオーバーを打たれ、4点目を失った。中西投手コーチは「去年はピンチでベストボールがいっていたけれど、今年はワンチャンスでやられている」と粘れない現状を語った。

 1回は3番井口に対して155キロをマーク。ロッテを8回無失点に封じた5月27日甲子園の再現かと思われた。2回にはゴメスの適時失策で先制点を奪われた。それでも次打者吉田にはサインに首を振り、自分の意思で直球を選択。151キロを外角低めに決め、見逃し三振でピンチを脱した。中西投手コーチも「1、2回は悪いとは思わなかった」と分析。昨年8月31日広島戦では中断するほどの豪雨の中、節目の10勝目をつかんでいた。天候を含め、窮地での強さを発揮できなかった。

 高校3年時、全国の球児を引っ張った日本ハム大谷、中日浜田との「ビッグ3」が偶然にも同日先発。春夏連覇で頂点に立った藤浪が、3人の中で最短となる5安打4失点で5回降板、ただ1人の敗戦投手となった。2戦連続で好投していた藤浪で負けたのはチームにとっても痛手。交流戦は6勝11敗の借金5で、ついに貯金は4月11日以来の1まで減った。

 大雨でも黄色く染まった満員の左翼スタンド。ファンは試合終了まで席を立たずに声援を送った。今日にも貯金消滅の現実。崖っぷちで、涙雨はいつやむのか。【松本航】

 ◆藤浪のアウトカウント別失点

 この日の4失点はすべて2死からだった。今季は35失点のうち2死から17失点で、全体の48・6%と目立つ。48失点だった昨季は2死から18失点で37・5%だった。