<広島6-1楽天>◇18日◇マツダスタジアム

 頼れる男が戻ってきた。楽天永井怜投手(29)が広島戦に3番手として、今季初登板を果たした。球速は最速144キロを記録するなど2回無失点と好投した。調子が上がらずに開幕から2軍調整を続け、15日に1軍登録されたばかり。先発から中継ぎとなったが、しっかり役割を果たした。しかしチームは敗れ3連敗。借金は今季最多の14となるも、右腕の復活が巻き返しの起爆剤となる。

 永井の気持ちはまっさらだった。左翼フェンスの向こうに電車が走るマツダスタジアム。育った東洋大のグラウンドをほうふつとさせる球場で、昔のように思い切り腕を振った。1-6と点差のついた状況でのマウンド。最初から全力だった。広島梵に投じた2球目でこの日の最速144キロを記録すると、5球中4球を直球で押した。遊ゴロに仕留めると、小さく息を吐いた。「真っすぐのキレが戻ってきた。ファームでのスタイルを変えずにいけた」と手応えを口にした。

 苦しんだからこそ、1軍のマウンドは格別だった。2月19日、沖縄・宜野座で行われた阪神との練習試合。3回を投げ13安打12失点と打ち込まれた。春先とはいえ130キロ中盤の直球は連打を止めるだけの威力がなかった。2軍降格後は体を作り直した。ウエートトレーニングの量を増やし、走り込みも徹底的に行った。球速は徐々に戻った。しかし、5月15日のイースタン巨人戦で3回11失点(自責6)と再び打ち込まれた。告げられたのは中継ぎ転向だった。

 先発の柱として球団を支えてきた自負もある。だが、その宣告を前向きに捉えた。「がむしゃらさを思い出した。マウンドに行くのがルーキーの頃みたいに、緊張するんです」。失点の許されないリリーフに、忘れていた気迫を思い出した。ファームで結果を残し続け、ついにつかんだ1軍への切符。もう打たれるわけにはいかなかった。

 この日は、得点圏に走者を2度置いた。無失点に切り抜けたが「3人で抑えて帰らないと。しんどい場所で投げられる投手にならないといけない」と満足はしていない。それでも「1軍のマウンドで投げられたのは収穫です。つらい思いをしてきましたから」とホッとしたのも事実だ。地獄を味わった男の強さが、低迷するチームを変えるきっかけに必ずなる。【島根純】