<阪神3-0巨人>◇21日◇甲子園

 ヒゲは伸びる、白星も伸びる。阪神岩田稔投手(30)が投げると、ゼロ行進が伸びていく。絶好調左腕は巨人を寄せ付けず、8回を5安打で0封した。7月に入り負けなしの4連勝で8勝目。防御率は1・94と再び1点台に突入した。規定投球回まで1回2/3。次回先発時にも、リーグトップに躍り出るはずだ。

 最大のピンチでも岩田は冷静だった。2点リードの4回2死一、二塁。打席には6番阿部を迎えた。1発出れば逆転。ピンチで冷静に大胆に。臆せず内角を狙う。138キロのツーシームでつまらせた。ボテボテの一ゴロだった。

 岩田

 強い浜風が吹いている。ホームだし、特徴は頭には入っていた。今日はそれを冷静に振り返れた。使わないと本塁打になるな、と。特徴を生かせた。

 いつにもまして強い浜風。右翼から左翼方向に、風速は8メートルにまで強まっていた。ピンチでふと、その存在を思い返した。引っ張らせることができれば、長打はない。失投しない制球力も今の岩田は兼ね備えている。熱さだけではないクレバーな投球。レジェンドが乗り移ったような技だった。

 試合前に始球式を務めたのが、OBの江夏豊氏。伝説の左腕のセレモニーを、すぐ横の“特等席”から見ていた。それだけではない。「今のプレースタイルを変えるな」。試合前には金言を授かっていた。5回、6回は先頭打者に安打を許すも、低めを丁寧についた。9回は守護神にマウンドを譲ったが、8回5安打無失点。チームトップタイの8勝目を手にした。

 岩田

 しっかり自分のピッチングが出来たと思います。低めに、という意識は回を追うごとに強くなっていきました。完封?

 別になかったです。

 後半戦開幕?

 何もないです。ただの一戦。

 プロ9年目で初の後半戦開幕抜てき。買われた安定感は数字も表している。規定投球回数にはわずかに達しないものの防御率はリーグトップの広島前田をしのぐ1・94。次戦には規定投球回数に達し、トップに躍り出る可能性もある。気負いのない等身大の投球が最高の結果をもたらした。送り出してくれた江夏氏に、結果で応えてみせた。【池本泰尚】

 ▼岩田が7月2日ヤクルト戦(甲子園)から4試合連続勝利。岩田の4連勝は、11年6月3日ソフトバンク戦(甲子園)~7月1日横浜戦(倉敷)以来、自身2度目で最長タイ。岩田の8勝は、メッセンジャーと並びチーム最多。