<広島7-5阪神>◇26日◇マツダスタジアム

 マツダスタジアムで前夜とまったく同じ光景が広がった。スピードに乗った阪神上本博紀内野手(28)は、跳びはねるようにダイヤモンドを1周。スタンディングオベーションの阪神ファンが迎えた。スコアボードに記された「2」の数字も同じ。ゲーム終盤での2夜連続同点弾。この時ばかりは虎党も勝利の夢を見ることができた。

 8回2死一塁。広島中田の真ん中に入った初球に、クルリと体を回転させた。打球は左中間へ一直線。左翼中東がジャンプするその頭上を越えた。2点リードされた状態での起死回生アーチ。前日25日にも2点ビハインドの7回に広島前田から同点弾を放っていた。2夜連続のヒーローを、ほぼ手中に収めていた。

 「負けたので特にはないです」

 その裏にスクイズを決められ、結果的に1発は白星につながらなかった。躍動したグラウンド上とは対照的に、試合後はまったく笑うことはなかった。一言だけ発し、帰りのバスに一直線。そこに満足感はなかった。

 1回には、5球ファウルで粘った末に10球目を中前打。3番鳥谷の打席で二塁に盗塁を決めた。鳥谷の左前打では高代三塁コーチの腕が回るのを確認すると、勢いよく三塁を蹴った。タイミング的には微妙だった。それでも返球を受けた捕手会沢のタッチをかいくぐる好走塁で先制点をもたらした。競り負けた痛恨のゲームで、上本の価値が光ったことに間違いはない。【松本航】