<巨人3-1広島>◇2日◇東京ドーム
復活ののろしだ。2日続けて4番に座った巨人阿部慎之助捕手(35)が、同点の6回1死二塁から勝ち越しの10号2ランを放った。今季初の逆方向となる左中間席最深部への1発で、好投の広島大瀬良を沈めた。新人から14年連続で2桁本塁打をクリアし、巨人では王、長嶋に続き、原監督に並ぶ歴代3位タイとなった。不振脱出へ打撃フォームにメスを入れ、即、最高の結果を出した。金看板がたっぷりと借りを返す。
この放物線を待っていた。巨人の4番らしい、慎之助らしい、強くて美しいスイングだった。6回。坂本のソロで同点に追いつき、なお1死二塁だった。広島大瀬良のかげりを逃さなかった。カウント2ボールからの3球目、甘くはない外角145キロをしばいた。「ファウルかと思った。どこに飛んでいったのか分からなかった」打球は、左中間席の一番深い場所に届いた。
決勝10号2ランは、広角打ちにしては意外な今季初の逆方向だった。本塁打自体、7月11日の阪神戦以来だった。なにしろ打点が同12日以来だった。ファンへの建前上「最高で~す」と2回言った。が、1回1死二、三塁で遊飛に倒れた自分に腹が立った。「初回で僕が打っていれば。クリーンアップだからね。それを忘れず、悔しさをぶつけました」と、慎之助節は出ないままだった。せっかちな男が珍しく、試合後は時間をかけ、正直に明かした。
阿部
こんなに苦しんだのは初めて。「もう1回ちゃんと考えろ」って、神様が言っているんじゃないかと思う時もあった。
巨人の太陽が闇に迷い込み、重い決断を下した。8月に入り、完成された打撃フォームを劇的に変えた。
構えを下げた。見逃し方に違和感を覚えていた。気が付けば、いつも高く掲げていたバットのヘッドの位置が、相手のボールにつられる形で下がっていた。「だったら初めから下げておいて、打つ瞬間だけ上げよう」と逆転の発想をした。特打で丁寧に染みこませた下段構えは実は、入団時の原点回帰だった。
心の持ちようも立て直した。長期遠征を終えた7月31日の休日。自宅のベランダで簡易プールに空気を入れ、子どもたちと遊んだ。「秘密特訓だよ。滑り台もやっちゃったよ」と少年の笑顔だった。もともと大好きな8月を区切りとし、心技体をリセットし、自力で闇を抜け出した。
原監督に並ぶ入団から14年連続2桁本塁打など、どうでも良かった。「全然打ててないから」と興味なかった。原監督は「逆方向はいい形。正しいスイング軌道。私よりはるかに質が高いし、可能性もある」としつつ「1本出たからといって、そうそう喜んでいるとは思いませんよ」と、阿部の胸中を言い当てた。4番の決勝本塁打は、今季90試合目にして初めて。12球団で最も遅かった。遅すぎる。阿部も原監督も分かっている。逆襲の夏が始まる。【栗田尚樹】
▼4番阿部が勝ち越しの10号を放ち、プロ1年目から14年連続2ケタ本塁打。巨人で14年連続2ケタ本塁打は、60~80年王の21年、58~74年長嶋の17年に次いで81~94年原に並び3位タイ。王はプロ2年目からで、プロ1年目からは長嶋、原に次いで3人目だ。巨人の4番打者が本塁打を打ったのは7月5日村田以来で、阿部は今季4番(8試合目)で初アーチ。4番打者の本塁打は村田5本、セペダ3本、アンダーソン2本、阿部1本の今季11本目だが、勝利打点付きのVアーチは阿部が初めて。これまで両リーグで巨人だけが4番のVアーチが出ていなかった。



