<阪神7-5広島>◇8日◇京セラドーム大阪
阪神福留孝介外野手(37)がマエケン攻略の号砲を鳴らした。同点に追いついた後の6回、内角低めのスライダーに反応した。打球は虎党の待つ右翼スタンドへ一直線だった。勝ち越しの4号ソロが決勝弾となった。
「相手の決め球でもあるし、自信を持って投げているボール。それをつかまえることができた。(変化球は)頭にはあったけど、狙って、そう簡単に打てる投手ではないから」
直前の打席で空振りを奪われていた相手の決め球を仕留めた。日本復帰1年目の昨季、PL学園の後輩にあたる前田には7打数無安打と封じられた。だが、今年はこれで5打数3安打。やられたら、やり返す。勝負の世界を生き抜いてきた福留の意地を象徴するような一撃だった。
わずか2日前、神宮では大敗の責任を負った。同点の6回無死一、二塁で併殺に倒れるなど3度の得点機で凡退した。「バカ野郎!」「やめちまえ!」。試合後、フェンス沿いを歩いて帰る福留に虎党から痛烈なやじを浴びせられた。勝者が一瞬で敗者に変わり、救世主とあがめられた翌日には敗戦の標的となる。
「命まで取られるわけじゃないから」。野球における天国と地獄を嫌というほど味わってきた男にはある種の達観がある。そう切り替えて、次の勝負へ向かう。ただ、そんな福留が勝負の鉄則として1つだけ自らの辞書から除外している言葉がある。
「待(たい)」
失敗を恐れることによって生まれる受け身の姿勢を表現した1字だ。どんなに失敗しても、批判されても、受けずに逃げずに、前だけを見てプレーしていく。
「孝介か、隼太で1発ほしいと思っていたところで打ってくれた」。和田監督が称賛した。ベンチも、スタンドも最も望んでいた場面での決勝アーチ。福留がまた、勝者へと返り咲いた。【鈴木忠平】



