<巨人1-4中日>◇9日◇東京ドーム
巨人と阪神の差が0・5ゲームに肉薄した。エース内海哲也投手(32)とルーキ小林誠司捕手(25)のバッテリーで臨んだ中日戦。1点を追う6回、平田に浴びた2ランが痛恨だった。チェンジアップの多投で試合の主導権を渡した。打線は山井-谷繁の老かいな組み立てを崩せず沈黙した。昨年は8月9日に優勝マジックを点灯させた王者。しのぎ合いが始まる。
巨人小林が生まれた25年前、中日谷繁はプロ1年目だった。新人捕手は前夜、日が変わるまで球場に居残り研究していた。内海を一生懸命リードし、5回まで最少点差で粘った。どちらに点が入るかで試合が決まる。潮目の6回だった。無死一塁で平田を迎えた。試合前の通算3割4分3厘。エースの天敵だった。
小林はアウトローに徹した。初球。外角低めいっぱいのチェンジアップ。空振り。2球目。外角ワンバウンドのチェンジアップ。ボール。3球目。外角中央のチェンジアップ。踏み込まれた。バットのヘッドが返った瞬間、距離の出る平田特有のポイントで引っ張り込まれた。谷繁は緩い変化球を勝負球にまぶす不敵な配球で、巨人を翻弄(ほんろう)していた。2点の重みがいつもと違った。
内海は「あれに尽きる。ホームランは絶対ダメ。ボール球を投げていれば。申し訳ない」と反省した。「ホームランは防がないと。打たれる前に『こう組み立てたい』と意思を伝える必要があった」と反省した小林は、最高の勉強をした。
下位打線に向かう。徹底的にリスクを避けていい場面だった。同じ球種を初球から3球、同じコースに厳しく続けることは不得手な打者には酷。しかも内海は、右打者の懐を刺す鋭利な武器を2種類も持っている。投手有利の1ストライクで「押し引き」の選択肢が一気に広がる。相手は、追い込まれたら甘い球がこないと知っている。内海にとって並行カウントは、読んで勝負をかけられる危険性が高い。踏み込んだ平田が何よりの証拠だった。
内海は平田が苦手とはいえ、通算38打席目で初のホームランだった。誰で仕留めるか読む。間を取る。内海の感性に問い、判断を仰ぐ。手だては案外、多い。阿部が3試合続けて一塁を守った。原監督は「ベストの用兵」と言った。虎と0・5差。4位中日までも4・5差。無風の昨年8月とは違う。小林は、実力で高い期待値をつかんだ。まだまだ出番はある。剣が峰でやり返す。【宮下敬至】



