<阪神5-4広島>◇9日◇京セラドーム大阪

 予想外の出番にも動じない。阪神の守護神呉昇桓が貫禄の投球でまた1つ、セーブを刻んだ。シーズン99試合目で27セーブをマーク。98年にリベラが記録した球団外国人最多セーブに早くも肩を並べた。

 「点差がどうなるか分からないし、常に行ける準備をしていた」

 8回の守備が始まる時点では4点のリード。それでも呉昇桓は出番に向けてのルーティンを黙々とこなしていた。先頭堂林を1球で打ち取ると、8番会沢にはカウント2-2から直球勝負。鶴岡の構えたミットとは逆球だったが関係ない。内角高めの149キロで空振り三振を奪った。2死一塁で迎えた途中出場の小窪には一転、変化球勝負を選択。2つ目の空振り三振を奪い、粘る広島を振り切った。勝負どころで直球も変化球も両方を信じられる。しっかりした準備が決め球の選択肢を広げ、勝利をたぐり寄せた。

 ナイターからのデーゲーム。それでもイニングをまたいだ前夜の影響を、全く感じさせなかった。疲れを引きずらないための工夫は細部に及ぶ。試合前練習でのランニング。左手でストップウオッチを握った際の「右」がバロメーターだ。「その日、その日でメニューも走り方も変えているんだ。肩と肘、全体のケアだね」。疲れを感じれば右手をだらーんと下げて走る。そうでなければ通常のフォームで力強く。わずかな疲労も敏感にキャッチし、常に最高な状態を試合終盤に持っていく。

 「今日は能見さんの1勝が大きい。能見さんの流れも変わるし、チームにも大きな影響を与えるんじゃないかな」

 出番までは自分に最大限向き合い、マウンドに上がればチームや仲間のために戦う。1年目なんて関係ない。呉昇桓は今の阪神に欠かせない。【松本航】