<中日5-4DeNA>◇13日◇ナゴヤドーム

 追い込まれた竜がまたも「勝利を呼ぶ男」に救われた。中日ドラフト2位ルーキー又吉克樹投手(23)が山井に並ぶチームトップタイの8勝目を挙げた。7回2死二塁で登板し、主砲ブランコを斬るとその裏にチームが勝ち越しに成功。中継ぎながら白星を重ねる「持ってる男」が、また勝利投手になった。1ゲーム差まで迫られた5位DeNAを再び突き放した。

 不思議なパワーを持つ又吉にまた白星が転がってきた。同学年の福谷浩司投手(23)とお立ち台に上がった背番号16は、いつものように野手に感謝した。「何とか(投手陣が)粘っていたので自分も粘りたかった。野手の方が点を取ってくれたので、野手の方のおかげです」。こんなシーンは今季もう8度目。又吉が投げれば流れが変わる。これは紛れもない事実だ。

 この日もしびれるところで出番が回ってきた。マウンドに上がったのは、4-4の7回2死二塁。一打勝ち越しの場面で主砲ブランコを迎えたところだった。「長打だけは避けようと思っていた」。カウント1-1からど真ん中に146キロ直球を投げきり右飛。これで対ブランコは5度対戦してノーヒット。注文通りの仕事をすると、その裏に平田が勝ち越し打を放った。

 中継ぎながらルーキーではトップの8勝目だ。46試合に登板して防御率は2・60。初めて体験する144試合の長丁場で8月上旬には体調を崩した。広島、東京と遠征続きで加えて猛暑。熱中症の症状を訴えた。8月2日のヤクルト戦(神宮)ではベンチを外れるなどチームに迷惑をかけただけに、体調管理に対する思いを強く感じた。

 貢献したい。その思いがルーキー右腕を突き動かす。独立リーグの四国ILで戦っていた昨季は「3食、牛丼だったこともある」が今は栄養バランスを考えて寮で出される食事を取る。休養日でもナゴヤドームに足を運びマッサージを受ける回数が増えた。

 絶対的守護神である岩瀬が左肘の違和感で離脱した。リリーフエース浅尾も不調のため2軍落ち。この日53試合目の登板だった2年目福谷と又吉がフル回転で中継ぎを支えているのが現状だ。谷繁元信兼任監督(43)は「よくやってくれている」とたたえた。

 「1試合、1試合しっかり投げることしか考えていない。そういうこだわりはもうなくなりました」

 新人王も狙えそうな又吉はそんな質問に苦笑いで応えた。最後まで走り抜くことが今の目標だ。【桝井聡】