<楽天2-3ソフトバンク>◇29日◇コボスタ宮城

 孤軍奮闘も実らなかった。楽天則本昂大投手(23)が9回8安打2失点と力投。自己最多138球を投げて11三振を奪うも打線の援護が少なく、勝ち負けはつかなかった。リーグトップタイの12勝目を惜しくも逃したが、9回まで球速は衰えず、気迫の投球を見せた。チームは延長10回に勝ち越されて敗れた。

 真っ向勝負だった。2-2で迎えた9回2死一、二塁で則本は思い切り腕を振った。ソフトバンク明石に対して、一番信じられるボールを投げた。145キロ、内寄りの直球。球審の右手が上がると球場のボルテージは一気に上がっていく。こん身のストレートを2球続け、差し込んだ。ファウルを打たせ、0-2としてからの4球目。外角低めへ148キロの直球をねじ込み、見逃しの三振を奪うと腹の底からほえた。「首位を走るチームに先行されるのはキツイと分かっているのに、先制を取らせた僕のダメなところ」と序盤に打たれた悔しさを球に込めた。

 1球の失投が重くのしかかった。2回2死二塁で、走者は李大浩。「シングルヒットならかえってこられない」と警戒心の緩みが、手元を狂わせた。カウント2-2からの5球目、長谷川へのフォークは高く浮いた。するどい一振りで左中間へはじき返され、先制を許すと唇をかんだ。「2回の長谷川さんへの投球がなければ2点差で勝っていた。あそこを抑えられれば、展開も違っていたのに」と大きな1点を振り返った。

 最多勝争いの中で、気迫は見せた。12勝を挙げているオリックス金子、西に次ぐ11勝を挙げており、「ここまできたら、近くにあるから意識しないわけにはいかない。チームは勝つしかない状況。1つでも順位を上げてタイトルが目の前にあればいい」と話していた。最下位に沈むが、チームの勝利が最優先。個人の記録は二の次と言い切る。何としてでもチームを勝たせたい。強い思いが自己最多を1球更新させた。9回138球。昨年の9月24日の西武戦で投じた137球を超えた。

 それでもつかめなかった12勝目。勝たなければチームの浮上もタイトルも見えてこない。「フォークやカットは有効だった。次に生かせる部分はあった」と前を向いた。【島根純】