<日本ハム7-2ソフトバンク>◇11日◇東京ドーム

 日本ハム中田翔内野手(25)が、祝砲のアーチを架けた。3回裏無死一、三塁から右中間スタンドへ25号3ランを放った。序盤にリードを広げる1発で、就任3年目の栗山英樹監督(53)に通算200勝目をプレゼント。首位ソフトバンクに2勝1敗で勝ち越した今カードは、2本塁打と主砲らしさを見せた。残り19試合。最後の反攻へ、明日13日から、2位オリックスを本拠地に迎え撃つ。

 追う者の強みだ。中田が、息の根を止めた。3点リードの3回、序盤で速攻を決めた。エンドランで無死一、三塁。中島、陽岱鋼が演出してくれたチャンスで、研ぎ澄ました。浮いて高めに入ってきた135キロのカーブ。完璧に反応し、やや差し込まれながらもパワーで振り抜いた。右中間席の最前列へ突き刺す25号3ラン。「狙っていたボールだったので」。涼しくワンサイドゲームへのくさびを打った。

 厳しくも、温かい数々の先人たちの教えを、ラストスパートへの推進力に変えた。勝負のシーズン佳境に突入。この日まで9月は7試合で打率1割4分3厘、1本塁打とスランプに陥っていた。たまったストレスを、バットをたたきつけるなど野球用具にぶつけることが多々あった。時にベテラン稲葉ら先輩選手が、お小言で襟を正すこともある。目をつむり、黙認してきた栗山監督も重い腰を上げた。全体の士気が下がる愚行。中田に全幅の信頼を置いてきたが9月に入り、1対1で向き合い厳重注意したという。

 今カード2戦目の10日には日本球界、日本ハムの偉大な先輩も尻をたたいた。球団買収した74年から2年間、日本ハムの初代監督を務めた中西太氏(81=日刊スポーツ評論家)。「怪童」で鳴らした、中田と同じ右長距離砲の伝説の1人が歩み寄った。打撃のことではなく諭したのは、野球との向き合い方だった。試合前練習中に歩み寄り、説いた。怠慢に見える姿勢を、優しく突き上げた。

 中西氏

 守備もタラタラやらないで、ちゃんとやりなさいと。打つだけじゃない。スキを見せたらアカンとね。説教じゃない。注意、喚起をしたんよ。今、ホームラン打者といえるのは中村(西武)、中田くらいやと思っているからね。

 生きる伝説のスラッガーからとがめられもしたが、認められた。見込む才能に、本塁打数が比例しないことも突っ込まれた。中田は「札幌ドームは広いので」と応戦。中西氏は「ちゃんと打ったら球場の広さは、関係ない」とはねつけられ、共鳴していたという。東京ドームとはいえ、最深部の1発で返礼した。

 首位ソフトバンク3連戦でカード勝ち越し。明日13日からは札幌ドームで迎え撃つ、2位オリックスとの3連戦が待つ。今季東京ドーム最終戦を「勝てて良かった」とだけ話し、追撃への臨戦ムードを漂わせた。混パへ。ネバー・ギブアップを体現する一振りに、奇跡の夢を乗せる。【高山通史】