鳥谷、メジャーへ加速-。阪神が、海外FA宣言をしてメジャー挑戦が濃厚となっている鳥谷敬内野手(33)と極秘裏に残留交渉を行ったことが17日、分かった。球団側は南球団社長、高野球団本部長が出席。全力で慰留に努めたが、鳥谷は結論を持ち越した模様だ。あらためてメジャー挑戦にかける思いが浮き彫りとなった。

 鳥谷が午前9時40分ごろ、愛車で甲子園クラブハウスの駐車場に入った。公の場に姿を現すのは、日本シリーズ終戦翌日の10月31日に福岡から大阪に戻った時以来のことだ。午後1時40分、駆けつけた大勢の報道陣には「何もないですよ」と多くを語らず、笑顔で球場を後にした。

 クラブハウス内で動きはなく、そのまま向かった先は兵庫・西宮市内の高級ホテルだった。ここで約1時間にわたり、極秘裏に残留交渉が行われたようだ。球団サイドは交渉窓口の高野栄一球団本部長だけでなく、南信男球団社長も同席した。

 球団社長自らの出馬からも阪神の本気度がうかがえる。全力で慰留されたのは間違いない。あらためて複数年契約で誠意を示されたことは確実だが、鳥谷は結論を持ち越した模様。それだけメジャー挑戦にかける思いが強いという証拠だ。

 夢の実現に向け、着々と準備は進んでいる。11月上旬に極秘で米国に渡り、屈指の敏腕スコット・ボラス氏を代理人に選んだ。今オフのFA市場は遊撃、二塁、三塁の内野手が不足しており、鳥谷は二塁手、または3ポジションを守れるユーティリティープレーヤーとして注目されている。現時点でメジャー契約を勝ち取れる可能性は高い。

 すでにブルージェイズを筆頭にナショナルズなど複数球団が獲得調査を行っている。ボラス氏の人脈を駆使すれば、新たに獲得へ興味を示す球団が現れてもおかしくはない。今回の阪神の残留交渉で情勢が変わらなかったということは、メジャー挑戦への流れがさらに加速することを意味する。

 今後、再び残留交渉が行われるかどうかは未定。阪神側は厳しい状況に追い込まれているが、可能性がある限りは残留への望みを捨てない。膝を突き合わせて話し合い、胸の内は聞き出した。代えが利かない生え抜きキャプテンの慰留を全力で続けていく。

 鳥谷は12月に入っても、腰をすえてメジャー球団との交渉を進めていく構え。まだ時間は残されているが、大きくメジャー挑戦に傾いている心を翻意させることは、極めて難しいミッションとなりそうだ。<鳥谷メジャー挑戦への経緯>

 ◆10月30日

 海外FA権行使の意思を持っていることが明らかに。日本シリーズ敗退が決まった試合後に「ゆっくり考えます」と話した。

 ◆31日

 球団首脳から鳥谷流出を危惧するコメントが続出した。南球団社長は「全力で慰留します」、和田監督も「彼がいないチームは考えづらい」。

 ◆11月4日

 ヤフースポーツやニューヨーク・ポスト電子版などの米メディアにも「鳥谷メジャー移籍」に関する記事が登場した。

 ◆6日

 極秘渡米。代理人の選定など、移籍への本格準備をスタートさせた。

 ◆11日

 球団にFA申請書類を提出。球団がNPBに手続きを行った。

 ◆13日

 代理人がスコット・ボラス氏に決定したことが判明。一方で阪神が残留交渉を設定していることも判明。