虎のおかわり君が内野争いに殴り込みや!

 阪神の高知・安芸キャンプで19日に紅白戦が行われ、売り出し中の陽川尚将内野手(23)が豪快アーチをぶっ放した。厳しい内角球を左翼に柵越えし、和田豊監督(52)が「完全に1軍クラスの打球」と絶賛。濃厚だった来春1軍キャンプ参加にとどめを刺す一撃となった。補強などの状況で流動的な虎の内野陣。来季2年目の大砲が急成長すれば三塁争いも夢じゃない。

 将来を感じさせる驚異の弾道だった。安芸市営球場の客席がひときわ沸いたのは7回だった。陽川は先頭で打席に入り、左腕山本に2球で追い込まれる。平行カウントに持ち込んだ5球目。内角を厳しく突いた直球に、両腕を折りたたんで強振する。低いライナーがグングン伸び、瞬く間に左翼フェンスを越えていった。

 驚きの表情を浮かべたのは和田監督だった。「いいコースに反応した。捉えた時の打球の質は完全に1軍クラス。平田ヘッドに話を聞いていたけど、実際に自分の目で見てなるほどなと。なかなかああいう打球を飛ばせる選手は少ない」。指揮官もほれぼれする、スラッガーらしい打球だった。ありふれた本塁打ではない。濃い内容が潜在能力の高さを感じさせる。

 プロ1年目のシーズンは1軍に昇格できず、2軍で98試合出場して打率2割4分1厘、6本塁打。今秋キャンプでも明確な課題がある。「肘の使い方だな。(バットが)外から出る」と和田監督。ヘッドが遠回りし、最短距離で球を捉えるスイングではなかったという。集中特訓し、今年ラストの実戦打席で完璧に振り抜いた。

 予想以上の対応力に、和田監督は「体に巻きついていたね。ああいうこともできるんだ」と絶賛する。平田ヘッドコーチも「うちになかなかいないタイプ。おかわり君みたいな感じ。あんな感じになってくれたら理想」と評した。本塁打王5度の西武中村を理想像に挙げるほどの衝撃。キャンプ中の柵越え連発で来年2月の1軍キャンプ参戦が濃厚だったが、この一撃で決定づけただろう。

 阪神にとって待望久しい右打ちのスラッガーだ。和田監督は「守備もまだまだやらないといけない」と指摘するが、鳥谷の慰留や中島の獲得は長期戦となる様相。来季の内野陣は流動的で、陽川も急成長すれば三塁の定位置争いが見えてくる。周囲の期待感をよそに、大砲は冷静に言う。「気にせず、このキャンプ、1日1日を大事にして来季につなげられる結果にしたい。うまく体が反応しました」。1回にも1死二塁で左前適時打。天井知らずの有望株がグッと1軍を引き寄せた。【酒井俊作】

 ◆阪神の内野事情

 今季は一塁ゴメス、二塁上本、遊撃鳥谷が基本布陣で三塁は今成、新井良、西岡が守った。このオフは海外FA宣言した鳥谷の慰留と、アスレチックスFA中島の獲得に全力を注いでいる。さらに中堅大和を遊撃に再コンバート。中日を戦力外となった森越を獲得するなど陣容を整える。ベテラン、中堅では新井が自由契約で広島に移ったが、関本、坂、黒瀬が控え、若手の北條、陽川、西田、荒木らが追う。<陽川尚将(ようかわ・なおまさ)アラカルト>

 ◆虎党

 1991年(平3)7月17日、大阪市生まれ。幼いころから阪神ファンで憧れは今岡誠氏。

 ◆球歴

 小2から野球を始め、金光大阪では1年夏からベンチ入り。3年時に巨人から育成3位で指名を受けるが断り、東農大に進学。東都2部リーグで通算105安打、23本塁打。

 ◆超人

 東農大4年時の秋季リーグで守備中に左肩を脱臼。試合中にはめ直し本塁打をたたき込んだ。

 ◆フィルダー超え

 今月13日のフリー打撃では、安芸市営球場の左翼席後方にあるフィルダーネットを越す場外弾。目撃した中年男性は「安芸に10年ほど通っているけれど、ここまで飛んだのを見たことない」

 ◆サイズ

 179センチ、86キロ、右投げ右打ち。