巨人が戦局を打開する“原スペシャル”の第3弾として、「フォース・防(ボー)ク」をプランの1つに用意した。11日、1軍に続き、2軍でも投手陣が「フォース・ボーク」を練習。一、三塁から一塁走者が二塁への偽走で挟まれる状況を想定し、対応を実践した。年に1回あるかないかのビッグプレーを1、2軍で完璧に共有。リーグ4連覇を狙う原巨人の強さが、凝縮された練習だった。

 観客もまばらな午前のA球場、阿波野2軍投手コーチを中心に、マウンドに2軍の投手陣が集まった。入念な説明の後、走者が一塁と三塁に置かれた。「外せ!」。野手から声が飛ぶ。投手は冷静にプレートを外し、二塁へ偽走する一塁走者を挟んだ。32歳の香月から19歳の平良が、“その時”を想定した実戦練習を繰り返した。

 “原スペシャル”の第3弾として、「フォース・防(ボー)ク」が浮上した。昨季は内野手5人、外野手を右中間と左中間に配する「西岡シフト」と三遊間に3人の内野手を配する「ゴメスシフト」を採用。戦局を打開する大胆なシフトだが、原辰徳監督(56)は「まだあるよ。機会があれば使う可能性はある」と明言。内容は不明だが、「フォース・ボーク」も可能性がある。

 4連覇への重要なエッセンスとして加わる。原監督は「全勝はできない。3分の1はうちが大勝し、3分の1は敵が勝つ。我々は、残り3分の1を接戦に持ち込んで戦って、勝つ」と筋道を立てる。長丁場のシーズン、ターニングポイントとされる試合が必ず訪れる。勝敗を分けるその時-。奇策ではなく、1勝をもぎ取るための必勝法として、効果を発揮する。

 岡崎2軍監督は「1、2軍でも同じチームですから。その時はいつ来るかわからないでしょ。1軍に上がった時、しっかりできるように準備しておかないと」と説明した。平良は「1点勝負の時にポイントになるプレー。緊迫した場面なので、反復して準備することが大事」と話した。レアな状況でのプレーをも1軍と2軍が共有する。巨人の強さが象徴された。

 1年に1度、あるかないかのビッグプレーにも、力を入れる。その必要性について、原監督は「1年にあるか、ないかだからこそ、失敗できない。しっかり準備をしておけば、とっさに出るんだ」と言った。スローガンに「新成」を掲げ、「いかにして勝つか」を追求する。原巨人が強固な防御網を張る。【久保賢吾】

 ◆フォース・ボーク

 走者一、三塁の場面で行われるサインプレー。三塁走者に背を向ける左腕投手に対し、2人の走者が連動して動くことでけん制動作に動揺を与え、ボークを誘発し三塁走者が生還すること。この場合の「フォース」は「強制する」の意味。ここから解釈が拡大し、右投手の場合でも一塁走者が故意に飛び出し、守備陣の注意を引きつける間に、三塁走者がホームを陥れるプレーに対して用いられている。

 ◆原スペシャル

 ここ一番で採用する戦術。14年5月10日の阪神戦(甲子園)では、引っ張り傾向の強い4番ゴメスに対し、三遊間に内野手3人を配する「ゴメスシフト」を実行。同点の9回2死満塁のピンチではカウントごとにシフトを動かして視覚的な重圧を与え、空振り三振に抑えた。14年7月11日阪神戦(東京ドーム)では、2点を追う6回1死二、三塁で「内野5人制」を敷いた。こちらもカウントに応じシフトを動かしたが、代打西岡に適時打された。