<東都大学野球:東洋大3-0駒大>◇第1週初日◇4日◇神宮

 春の王者、東洋大のエース左腕の藤岡貴裕投手(4年=桐生一)が昨秋以来の完封勝利で駒大に先勝した。

 最速153キロ左腕の東洋大・藤岡は、大学ラストシーズンの目標を開幕戦で達成してしまった。「何としても完封、と思いマウンドに立ちました」。フォームバランスを崩し最速149キロ。高橋昭雄監督(63)が「40点」という出来ながら、宣言通りの無失点完投だ。ネット裏には日米12球団のスカウトが詰めかけた。3四死球4安打、得点圏に5度走者を進めても要所を締めた。

 春の全日本大学選手権を制した鉄腕も、公式戦完封は昨年10月の亜大3回戦以来317日ぶり9度目。昨秋は5戦を0点に抑える「Mr.完封」だった。だが一転、今春は「勝負どころで安易に直球を選んで」打たれた。全15試合にフル登板しながら完封はゼロ。リーグ戦22勝目は「スライダーで三振を取りたいと思ったところで取れた」と9三振を奪う、狙い通りの価値ある完封劇となった。

 奮闘の陰には被災球児との約束もあった。8月上旬、宮城県でボランティアに参加。がれき撤去班と分かれ、グラウンドを流された農業高校の生徒を指導した。「水のない所に船がポツンとあったり、被災地を目の当たりにした。春の試合を見てくれた投手が『秋も応援します』と言ってくれました」。頑張る姿を見せたかった。もちろん完封だけが目的じゃない。東洋大だけに与えられた、春、秋リーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮の4冠制覇への挑戦権。藤岡の見せ場はこれからだ。【鎌田良美】