6球団キーマンが語る
「ゴールデングラブ賞へ新型グラブ」オリックス・バファローズ大引啓次
優勝に欠かせない副キャプテンへ
機は熟した。オリックス大引啓次内野手(27)が、プロ6年目にダブルの栄誉をつかみにいく。今季から副キャプテンに就任して、内野の中心である遊撃を担う。チームとしてリーグ優勝、そして個人としてはゴールデングラブ賞の初受賞が目標になってくる。
大引は、岡田監督ら首脳陣、フロント、選手が口をそろえるリーグ優勝を目指す上でのキーマンになる。
「岡田監督も珍しいことに公の場で優勝ということを口にされる。選手の中でも自然とそういう言葉が出てきます。チーム一丸となってやっていきたい」
指揮官からの指名でキャプテン後藤をサポートする副キャプテンとなった。ただ気負いはない。
「副キャプテンに任命されたからということではなく、ショートの位置を守らせてもらっているので、内野の中心としてやらなければいけないポジション。グラウンド内では投手に声をかけたり、縦と横のラインをどんどん連係させていける選手になりたい。グラウンドの外では若い選手に声をかけたりして、チームワークもよくしたい」
フォア・ザ・チームを大事にする大引にとって、初受賞を目指すゴールデングラブ賞も自分のためだけのものではない。阪急時代の87年弓岡敬二郎(現2軍コーチ)以来、球団から遊撃部門の受賞者が出ていない。大引は「1度はとりたいというよりも、とらなきゃいけないのは義務です。プロ1年目から使ってもらって、球団に対する恩返しですから」。今季はナイキ社に要望して従来よりもサイズを5ミリ短くした新型グラブを手にした。より素手に近い感覚にこだわり、守備力の向上を目指している。2月キャンプ中は連日、新任の森脇浩司チーフ野手兼内野守備走塁コーチ(51)からノックを受けてきた。
「ある時にたまたま森脇さんの手のひらを見たら、すごくマメがつぶれていた。それでもノックを打ってくれる姿を見ると何とか期待に応えたいなと強く思う。『ゴールデングラブ賞をとれました。ありがとうございました』という報告ができるようにしたいです」
激しい動きを伴う遊撃手大引には、ひとつの儀式がある。10年から試合でも練習でも愛用するナイキ社の「アンダーレイヤー」に袖を通すことで、プロフェッショナルの本能が目覚める。ロッカー室で私服から戦闘服に着替えると、大胸筋、肩、上腕を中心に肌にフィットする抜群の感覚が戦いへの意欲をかき立てる。
「着た瞬間に、さあいこうぜという感じで戦闘態勢のスイッチが入る。ほどよい締め付け具合が、やる気を引き起こしてくれる」
優勝とゴールデングラブ賞。大引がチームへの貢献を続ければ、ダブルの栄冠も自然と近づいてくる。「1年間フルで、144試合出続けたいと思っています。自分の役割に徹して、チームのためにやっていけたら」。最高のシーズンを送るために、最高の準備を整えている。
◆大引啓次(おおびき・けいじ)1984年(昭59)6月29日、大阪市生まれ。浪速2年春のセンバツに1番遊撃で出場して、甲子園8強入り。法大では1年春から全試合にスタメン出場。06年の大学・社会人ドラフト3巡目でオリックス入り。07年3月24日ソフトバンク戦で、球団の新人では92年田口壮以来の開幕ショートで先発した。178センチ、80キロ。右投げ右打ち。
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