黄金ルーキーが新球解禁へ。楽天のドラフト1位松井裕樹投手(18=桐光学園)が15日、宮城・柴田町の仙台大学で体力測定を実施。準備運動のキャッチボールで、同2位の内田靖人捕手(18=常総学院)を相手にプロ仕様となるカットボールを試投した。高校時代から球数を減らすことを意識しており、奪三振数の多い左腕は打たせて取る投球を模索。昨夏から取り組んでいる新しい変化球を武器にプロの世界に挑む。

 風ひとつない穏やかな晴天。柔らかな日差しは暖かく、日本列島を襲った寒波がウソのようなぽかぽか陽気に松井裕の心は躍った。「外でやるのは久しぶりでしたし、暖かかったので」。ウオーミングアップのキャッチボールで、ゆったりと振りかぶり力の入ったボールを内田に投げ込む。ノビのある直球に隣のドラフト4位古川侑利投手(18=有田工)、同9位今野龍太投手(18=岩出山)も手を止め、見入った。

 「緩いカーブ、捕れない?」。この言葉が合図だった。キャッチボールはエンジンをかけた松井裕の投球練習へと様変わりした。カーブ、スライダー、チェンジアップ。全球種を投げた直後、内田へ「ジャパン(高校日本代表)前は良かったんだよ。結局1球も投げてないけど」と話しかける。スライダーより小さく、そして鋭く落ちる変化球を投げた。わずか2球。新球のカットボールだった。

 1度は封印したはずの変化球だった。奪三振が多い左腕はどうしても球数が増えるため、バットの芯を外しゴロアウトを奪う決め球を探していた。昨年9月に台湾で行われた18Uワールドカップに向けて新球を練習。独学で握り方を編みだし、米国などの強打者に試す予定だった。しかし、正妻だった西武のドラフト1位森友哉(18=大阪桐蔭)に1球投げたところで「いらん」とバッサリ。精度が上がらず使用することを諦めた。

 それでも右打者の内角を鋭くえぐるカットボールは、大きな武器になる。パ・リーグには西武中村や浅村、日本ハム中田といった右の強打者がズラリと並ぶ。強振してくる相手の芯を外すことができれば、1発を浴びることもない。この日行われた体力測定で、持久力の指数となる「最大酸素摂取量」を計測。スタミナは平均的であったため、球数を減らすことは長いシーズンを乗り切る上で重要なことになる。

 新球を含め全部で90球、力の入った球を投げ込んだ。「自分の主体となる球種をつかんでから取り組めればいい。(変化球は)キャッチボールの中で試してみたりする。投手にとってキャッチボールは大事だと思う」とカットボールは感覚をつかむ段階だと強調した。スライダーに次ぐプロでの新たな「伝家の宝刀」を焦らず、じっくり育てていく。【島根純】<松井の球種と特徴>

 ◆カットボール

 スライダーより小さく鋭く落ちる。右打者の内角をえぐる。

 ◆スライダー

 120キロ台中盤で直前で突然落ちる。直球と同じ軌道で来るため消えたように見え、ワンバウンドでも振ってしまう。

 ◆ストレート

 最速149キロ。ノビのある直球で、打者からは球速以上に速く感じる。

 ◆カーブ

 110キロ台でベース手前ドロンと落ちる。緩急で空振りを奪う。

 ◆チェンジアップ

 120キロ台後半で右打者の外角へと逃げる。スライダーと逆に曲がり狙いが絞れない。死球を恐れ左打者にあまり投げない。