【グアム15日=石橋隆雄】絞りに絞った!

 背水のシーズンに臨むソフトバンク松中信彦内野手(40)が指名打者でレギュラー奪取を狙うと明言した。本職の一塁はオリックスから加入した李大浩内野手(31)が確定的で、バット1本での勝負を決意。公開した自主トレでは、昨年10月末から契約するトータル・ワークアウトのケビン山崎トレーナー(57)の指導で引き締まった体を精力的に動かした。

 背水の覚悟だからこそ、松中ははっきり口にした。決意の言葉をグアムの青空に響かせた。

 松中

 李大浩も一塁を守りたいと言っている。球団が4番として彼を取ってきた。18年もプロの世界にいれば分かる。(自分は)指名打者だと思う。打つしかない。そこしか出るところはない。

 平成の3冠王、松中の代名詞とも言える「4番・一塁」は捨て「指名打者」として4打席に立つ。中村、ラヘアらライバルは多く、ここでも厳しい争いが待っている。それでも「代打は難しいから」とレギュラーのこだわりだけは捨てられなかった。真っ黒に日焼けしたボディーはプロ入り後、最も絞れている。

 松中

 10月末からひそかにケビンさんとトレーニングしてきました。

 巨人時代の清原を鍛えるなど肉体改造トレーナーとして定評のあるケビン山崎氏と契約した。以降、体脂肪率を5、6%下げ、16、17%にしてグアムへと乗り込んだ。

 昨年わずか9試合の出場に終わったことで、以前から知り合いだったケビン氏と契約した。ケビン氏といえば筋肉を大きくするイメージが強いが、今回の松中は今ある筋肉を正しく使うことで動きにキレを出すことがテーマだ。

 食事制限で夕食は炭水化物を絶つ。鳥の胸肉などでタンパク質を多く摂取している。ダッシュでも陸上選手のようなきれいなフォームで走り、ひねりなどの動きで体に刺激を与えていた。同行して指導するトータル・ワークアウトの下山英明トレーナー(32)は「3カ月でかなり変わってきました。20代の選手と比べても若い」と変貌ぶりを証言。ケビン氏も毎日電話で状態を確認している。2月のキャンプでも1週間ほど直接指導する。

 調整スケジュールにもむだがない。今週中にはフリー打撃を開始。27日までグアムで打ち込み、例年より前倒しで打撃フォームを固める。「体は100%。悔いなくやるだけ。自分に期待しています。最後に意地を見せたい」。2・1宮崎で、すべてを絞った松中がナインを驚かせる。<松中のメニュー>

 ▽ランニング▽ひねりなどを加えながら80メートルの坂道ダッシュ8本▽ストレッチ▽チューブで人を引っ張りながらのダッシュ6往復▽230メートルの坂道ダッシュ4本▽左肩のインナーマッスルトレーニング▽キャッチボール▽ティー打撃▽プールでクールダウン(この日はウエートトレーニングはなし)

 ◆40歳の指名打者

 88年ソフトバンクの前身・南海の門田博光は、130試合にフル出場。打率3割1分1厘、44本塁打、125打点で本塁打と打点の2冠に輝いた。40歳での40本塁打は史上初。チームは5位ながらパ・リーグMVPを獲得している。

 ◆今季の野手争い

 内野は一塁李大浩がDH併用、二塁本多、三塁松田、遊撃今宮が有力。外野は左翼から順に内川、柳田、長谷川か。一塁李大浩の場合にDHは中村、ラヘア、そして「一本勝負」を宣言した松中、新加入のカニザレスもいて激戦。さらに戦術的な判断やコンディション次第で内川や柳田がDHに回る可能性もある。捕手は細川、鶴岡、高谷、山下でガチンコ勝負となりそう。

 ◆ケビン山崎

 1956年(昭31)7月26日、広島県生まれ。米シアトルでトレーニング方法を学び、87年に「トータル・ワークアウト」を設立。00年から巨人清原の専属トレーナーとなり肉体改造を行った。現在もソフトバンク本多や日本ハム中田、多くのスポーツ選手のトレーナーを務める。国内の「トータル・ワークアウト」は東京2カ所と福岡にある。