<プロ野球ドラフト会議>◇27日

 最注目男に愛が届いた。3球団が競合した東洋大・藤岡貴裕投手(4年=桐生一)の交渉権をロッテが獲得した。ロッテは5月にいち早く1位指名を表明。くじ引きを見届けた藤岡は「初めて1位と表明してくれた球団なので、非常にうれしく思います」と涙を流した。

 モニターを一心に見つめていた藤岡の表情が、ふいに崩れた。用意したハンカチも忘れ、あふれる涙を制服の袖でぬぐう。「最初に1位と言ってくれた球団なので。うれし涙というか、つい流れてしまいました」。交渉権を獲得したロッテ西村監督のうれしそうな表情が、テレビ画面に映った直後だった。

 最速153キロの即戦力左腕は、一時は最大7球団競合の可能性もあった1番人気。結果的には横浜と楽天の3球団だったが、5月からラブコールを送ってくれた相手に藤岡も好印象を持っていた。「夏にオープン戦を2回やって、すごく雰囲気のいいチームでした。同じ左の成瀬さんの投球術を学んでみたい」。一足早くタテジマのユニホームに袖を通すと、西村監督直筆色紙を手にポーズ。午後8時半には会場から同監督が指名あいさつに訪れ、幸運の当たりくじを手渡された。

 ロッテは昨年の日本一から最下位に沈んだ。藤岡はチームを救うかもしれないツキも持ち合わせている。所属の東都大学リーグで春5連覇、全国制覇4度の経歴を持つ。高橋昭雄監督(63)は「藤岡の運も持ってってください。3年くらい日本一になれるかも」と冗談交じりに笑った。

 目標は高く持つ。「ケガなく先発のローテーションを守りたい。勝利数は今年のルーキーで一番勝っている(巨人)沢村さんを目指します」と、1年目での2ケタ勝利を狙う。東洋大でつけた「17」は成瀬が背負っているため「与えられた番号でいい。『これが藤岡の番号だ』と思ってもらえるようになりたい」と話した。4年前「高校ビッグ3」と騒がれた同い年の唐川と甲子園で撮った2ショット写真は、モチベーションを高めるため今も寮の部屋に置いてある。

 朝5時に起床し、青学大とのリーグ最終戦から始まった長い1日。大量のフラッシュとともに、藤岡のプロ人生が幕を開けようとしている。【鎌田良美】