球団新記録の70試合に登板したソフトバンク摂津正投手(27)が新人王に輝いた。18日、東京都内でプロ野球コンベンションの表彰式に出席。遅咲きルーキーは開幕からフル稼働し、最優秀中継ぎ投手賞と合わせて「2冠」獲得となった。今後予定される契約更改交渉では、今季推定年俸1200万円からの大幅アップが確実。04年新人王の三瀬と同レベルの5倍増が予想され、チーム内のアップ率でも1位を奪いそうだ。

 27歳の新人王が、はにかみながら赤いじゅうたんを踏みしめた。ファンの黄色い歓声に包まれ、摂津は少しうつむいた。初めて迎えるオフ。プロ野球ならではの豪華なイベントに遅咲きルーキーは恐縮しっぱなしだったが、「1年目しかとることができない賞をとれて、本当にうれしい」と喜びをかみしめた。

 ドラフト5位入団から大躍進した。高山投手コーチは振り返る。「新人自主トレでは握りが全部見える投げ方だったが、セットにして良くなった。ブルペンでは普通な感じだが、実戦になるとどうも打たれない。中継ぎ、そして後ろもやらしたら堂々とやる。これは!

 と思った」。オープン戦10試合に登板し、11回2/3を無失点で防御率0・00。12球団で堂々のオープン戦“新人王”の結果がシーズンの活躍を予兆していた。

 JR東日本東北に所属していた1年前は、仙台駅の構内に立っていた。働き場所を変え、球団新記録の70試合に登板した。防御率は1・74、奪三振は投球回数の79回2/3を大きく上回る102。立派な数字を残した今、しみじみ思う。「自分の中で1つの区切りとして去年、ドラフトにかからなければ社会人で、と思っていた。今、考えてみればプロに入ってこういう場にいられるので、間違えてなかったかなと」。救援陣不足で昨年最下位に沈んだチームを、3位に押し上げた充実感もあった。

 最優秀中継ぎ投手、新人王に続いて、もう1つ楽しみなタイトル?

 がある。初めて臨む契約更改交渉だ。角田球団代表は「摂津の査定ポイントは間違いなくチームトップクラス」と断言した。今季年俸1200万円からの大幅増は確実で、そのアップ率が注目される。一つの目安は、04年にセーブ王と新人王を獲得した三瀬が記録した5倍増(800万円→4000万円)だ。この前例に当てはめると、摂津も5倍増の6000万円前後か。いずれにせよ、アップ率では今季チーム「昇給王」になる可能性が高そうだ。

 新人としてこれ以上ないシーズンと思われるが、足元も見つめている。今季を自己採点すると「80点くらい。(残り20点は)まだまだ細かいところですが、ムダな四死球があった」と気を引き締めた。今でも返信はがきや切手があるファンレターには、丁寧にサインをして送り返している。謙虚さがある限り、摂津は成長を続ける。【押谷謙爾】