<WBC日本代表合宿>◇第1日◇15日◇宮崎
「名刀・将大」でWBC3連覇を切り開く。3月2日の1次ラウンド初戦(対ブラジル)で先発予定の田中将大投手(24)がブルペン入りし、本格的な投げ込みを行った。「いいものを出せた」と認めた40球の中に、有効な持ち球であるカーブはなし。国際試合で命取りとなる失投のリスクを考え、WBC本番では封印する。極限までぜい肉をそぎ落とし「中心となって、覚悟を持って」侍たちを率いていく。
雄大なフォームから放たれたWBC球は、ミットに収まる瞬間まで生きていた。田中は気持ちよさそうに、意のままに40球を操った。最高峰が集ってもモノが違った。山本監督が「精度、上がってるじゃないか!」と驚いた。慎重な本人も「今年ブルペンに入った中で、一番いいバランス。順調な調整が出来ていると思う」と認めた。3月2日のブラジル戦からフル回転。日本の命運を託すにふさわしいブルペンだった。
失投がなかった。が、投げ終えると捕手阿部と話し込んだ。「球種の優先順位の確認です。特に横のスライダーは、ミスは怖いが自分の武器。それにスプリット、ツーシーム、チェンジアップ」と、この日投げたすべての変化球を挙げた。この中に、田中にとって重要な持ち球であるカーブがなかった。
実は、重い決断を下してこの合宿に乗り込んできた。楽天の沖縄・久米島キャンプ。2月9日を最後にカーブを投げることをやめた。封印の理由について「いらないです。無理ですよ。WBC球だから…、それもあります。ボールに合わせた投げ方、意識にしないと」とした後「自信のないボールは投げません」と核心に触れた。カーブは持ち球の中で一番、精度に自信がないのか。「そうです」。WBCで投げるにはリスクの高い球種か。「そうです」。ともに即答だった。
不要なモノを断つ。球種を増やして投球の幅を広げたいのが、一般的な投手の思考。田中はその逆で“断捨離の思考”を持つ。
沢村賞を獲得した11年もそうだった。「投球チャートを見直したら、長打はほとんど高めに浮いた失投だった」と、潔くフォークボールを捨てた。「失投が、ほとんどワンバウンドになる。リスクが少ない」と、同じ縦の変化でも球速があるスプリットを採用。練習を重ねて代名詞とした。封印したカーブも、フォークも精度は十分に高い。それでも相手に寸分のスキも与えず封じ込めるため、球種をそぎ落とす。軸となるボールに、絶対の威力と精度があるから出来る芸当だ。
田中は勇ましく言った。「中心となって、覚悟を持って。メジャーの選手がいないからダメだった、と言われるのが一番嫌。今までの国際試合とは全然違う立場。プレーで(姿勢を)見せていけたら」。直球、スライダー、スプリット、ツーシームにチェンジアップ。厳選5種で真っ向勝負する。明日17日、強化試合の広島戦に先発する。マウンドで覚悟を披露する。【宮下敬至】
◆田中のカーブ
通常の緩いカーブは封印中。現在のカーブは120キロ台の「高速カーブ」で、10年4月に導入した。1試合に数球程度と比重は小さいが、有効な選択肢となっている。直球、ツーシームが150キロ前後、スライダー、スプリットは140キロ台前後と4球種は球速があるだけに、カーブが引き立つ。打者の打ち気をそらし、簡単に見逃しストライクを奪う場合が多い。
◆断捨離(だんしゃり)
ヨガの「断行(だんぎょう)」「捨行(しゃぎょう)」「離行(りぎょう)」という考え方が土台。日常生活に不要なモノを大胆に断つ、あるいは捨てることで、物欲から解放される。部屋を片付ける極意にとどまらず人生訓としても支持を得て、書籍はベストセラーになった。



