<WBC:日本8-6オランダ>◇2次ラウンドE組◇12日◇東京ドーム

 日米203勝右腕の黒田博樹氏(42)が、日刊スポーツ独占でお届けする「侍ジャパン随行記」。今回は2次ラウンド初戦、オランダとの激闘を分析した。序盤5失点も中盤以降、縦の変化球を有効に使い、強力打線を分断したバッテリーの信頼関係を評価。決勝トーナメント進出へ、明日14日のキューバ戦が重要と力を込めた。

 タイブレークまでもつれた試合展開で、日本に勝ちがついた。それがすべて。3戦全勝の1次ラウンドから打線を組み替え、投手は苦しみながら試行錯誤してつないだ。今日1日空くことが分かっていたから思い切った継投ができ、そして休養も取れる。みんなで戦い、勝った試合。次の試合にいい流れで入っていける。

 メジャーリーガーをそろえたオランダは、実に手ごわい相手だった。先発石川には登板間隔の影響があったのだろうか。1次ラウンド初戦と同じように、この日もシンカーに苦戦した。前回球数が58球だったとはいえ、春先の中4日はしんどい。調整を含め、難しかったと思う。大会規定の球数が1次ラウンドで少なくしているのは、選手側の調整を配慮したものだろう。

 3回、バレンティンに同点弾を浴びた。初球に上体を起こすような内角真っすぐでストライク。外角へのボール球を挟んで、内角へシンカーを投じた。コースは悪くない。それでもファウルにならずに、左翼ポール直撃の本塁打となったのは、配球を見切られていたのかもしれない。

 1次ラウンドは球数65球の中で、その日使える球をドンドン投げていけば良かった。ただ球数制限が80球となった2次ラウンドは、調子が悪い球種も使う必要がある。組み立ての中で、いかに捨て球として相手に印象づけるか。その作業がもう少しできていれば、良かったかもしれない。

 球審のストライクゾーン、大振りが目立ったオランダ打線相手には、縦の変化であるフォークが有効だった。それを最大限に生かしたのは、捕手小林だろう。たとえば千賀。彼は1次ラウンドから基本的に捕手のサインに首を振らなかった。5、6回と走者を三塁に置いた場面で、小林は勇気を持ってフォークを要求した。千賀は信じて腕を振り切り、小林は引っ掛けたようにワンバウンドするフォークでも見事に止めた。バッテリー間の信頼関係が同点のピンチを防いだ。

 初戦を取り、明日14日キューバ戦も大事になる。日本にとって1次ラウンドで対戦したことが吉と出るか凶と出るか。ただ、バッテリーにはプラスに働くはず。特に捕手小林がキューバ打線を実際に見ていることは大きい。いくら映像で見ていても肌で感じるデータに勝るものはない。投手も実際に投げて、打者がどう反応するか見てみないと分からないことがある。バッテリーにとっていい材料になるはずだ。先発が予想される日本のエース菅野が、どうやって試合を作るのか注目したい。