同学年、同門、同期、同級。

 そんな2人がいる。

 ワタナベジム所属の東洋太平洋ミニマム級王者京口紘人(23)、日本ミニマム級2位谷口将隆(23)。

 名前を記す順番で京口を先にしたのは、2月28日のタイトルマッチで初のベルトを巻いたばかりだから。王座決定戦にて同2位のアルマンド・デラクルズ(フィリピン)を3回2分2秒KOで下し、昨年4月のデビューから6戦6勝(6KO)での戴冠。1年たたずに1つの頂まで駆け上がった。「2番目」に名前を書いた谷口は、現在が6戦6勝(4KO)。同じくデビューは昨年の4月。4月には日本タイトル戦が控える。

 この2人、とにかく駆け足での切磋琢磨(せっさたくま)が見物だ。ともに関西の大学の主将、京口は大商大、谷口は龍谷大。初対面は中3で、縁あっていまはワタナベジムの寮にともに住み、寝食を共にする。スパーリングもしょっちゅう。そんな2人の会話は例えば…。


--互いの初印象は?

 谷口「初めて会ったのは中3のスパーリング。国体の近畿予選。そっから因果が…。高3から話してあげてますよ」

 京口「それはこっちやな。こっちからやな」

 谷口「高1のスパーリングではRSCで負けてます。それがアマで唯一のRSC負けです。淡い思い出やな~」

 京口「谷口は中3でヤンキーですよ。襟足がえらい長くて。いなかっぺヤンキーですねえ」

 谷口「でも、僕も京口とは絶対に友達にならんともいましたよ。互いに130センチくらいでしたよ。懐かしいなあ」


--一緒のジムに抵抗は?

 京口「ないですよ」

 谷口「最初はえっと思いましたよ。でも出世争いですよ。まあライバルというか舎弟ですけど。アマの成績は僕が上なんで。チケットもおれが持っているな」

 京口「まあ、あとはルックスになってくるんですけど。これはおれでしょ。あとは食い力も」

 谷口「こいつはめっちゃくいますよ。一緒にラーメンいって、大盛りにご飯にギョーザですからね」


--好きなものは被る?


 谷口「いや、かぶらないですよ。女優なら? 僕は有村架純さんが好きですよ」

 京口「この前の試合の時(昨年12月31日に大田区総合体育館でジム頭の内山高志の世界戦で前座を務めた)恥ずかしかったわ~。試合前の画面に『綾瀬はるかに会わないとだめだ』的なVTRですよ。本当は(好きな女優)いないけど、強引に名前言って、使わないでと言ったらそれでしょ。アップしている時にうわっと思いましたよ」

 谷口「あとはほんま、よくしゃべるでしょ、京口は。ボクが1なら、10ですよ」

 京口「しゃべり続けるとエネルギー使うんですよ、一石二鳥でしょ!」


 よくしゃべり、よく掛け合う2人が同門になったのは、ワタナベジムの井上トレーナーのスカウトによる。小学校時代から京口を知っており、大学卒業後にプロとしてジムに誘うために出向いた大学の近畿リーグ。そこで対戦相手だったのが谷口だった。劣らぬ才能、甲乙つけがたい、そこで2人とも、の運びとなった。2人の評は、こうなる。「京口は大胆で華がある。谷口は控えめですけど、確実なボクシングをする。白と黒くらいの差がある」。

 当初は3年かけて2人を育てていく、チャンピオンにしていく計画が、最高のライバル心の効果か、そのペースはかなり早まって、早くも京口はベルトを手にした。その控室、2人での記念撮影を頼むと、快く快諾して、谷口は悔しそうにも、うれしそうにもベルトを指さしてのポージング。「谷口の刺激になれば」を真っ先に盟友の名前を挙げた京口の言動とともに、2人の良き対抗心がにじみ出るやりとりが続いた。


 2人の今の目標はもちろん世界王者。そこには主要4団体がある。どちらが先にその頂を極めるのか。しかし、そこで戦いは終わらないのが2人。口をそろえて言うことがある。その時が来るのが楽しみだ。


「統一戦ですね、2人で世界王者として」


 ◆京口紘人(きょうぐち・ひろと)1993年11月27日、大阪府生まれ。アマ戦績は66戦52勝(8KO)14敗。好きな選手はローマン・ゴンサレス。趣味はスニーカー集め、絵描き。161センチ。


 ◆谷口将隆(たにぐち・まさたか)1994年(平6)1月19日、兵庫県生まれ。アマ戦績は74戦55勝(16KO)19敗。好きな選手は内山高志、渡辺二郎。趣味はプロレス、岩盤浴。162センチ。