ボクシングという競技は紀元前の古代ギリシャ五輪からあった。他は陸上中心で、レスリングとともに歴史のある格闘技。当時は無差別級というか体重制限なく、時間も無制限だった。18世紀に競技となった当時も同じで、体格差の優劣は明らかだった。

 そのうちヘビーとライトという2つの階級制になり、19世紀半ばには3番目にミドル級ができた。重い階級と軽い階級の中間というわけだ。リミットは154ポンド超(69・9キロ)~160ポンド(72・5キロ)。現在は17階級あるが、最軽量ミニマム級から13番目、最重量ヘビー級からから5番目になる。

 中間の階級と言っても、近代ボクシングが始まった英国を中心に欧米をベースに考えられたもの。日本などのアジアでは重量級に位置付けられる。何しろ、日本は95年の竹原まで、世界挑戦すらなかった。

 竹原への期待は薄く、それまでのテレビ中継局は見送り、別の東京ローカルで深夜に録画放送だった。しかし、3回に左ボディーでダウンを奪って見事に王座を奪取。「広島の粗大ごみが勝てた」の名言を残した。その後の挑戦も保住、淵上、石田と3人しかいない。

 厚い壁に、12年ロンドン五輪金メダリスト村田が5月に挑む。試合発表はプロ転向会見した同じホテルの会場。相手は当初の標的から変わり、カメルーン生まれのフランス人エンダムとの王座決定戦となった。

 相手はこれまでヌジカムと呼ばれ、04年アテネ五輪8強後にプロ入り。10年からWBA2度にWBOと3度暫定王座獲得。昨年12月は右1発で1回22秒KOでの奪取だった。2敗は世界戦で6度と4度のダウンも判定負けに持ち込んだ。今回38戦目とキャリアあり、テクニックある右ボクサーと言える。

 村田は今回13戦目となる。7戦目で初の世界ランカーに判定、8戦目で元ランカーに判定勝ち。昨年は元米国王者らに4KOと成長を見せたが、経験の差は大きい。帝拳ジムの本田会長も「きつい勝負になる。村田の頭と体力の勝負」と言った。

 ついに言うべきか、ようやくと言うべきか。本田会長は「挑戦は1、2年早いが、いろいろ事情もある」とも吐露した。最強のゴロフキンが3団体を統一し、マッチメークがより難しい中でのチャンス。日本人が好きな五輪の金メダリストだが、あれから5年が経過し、テレビ局の待ち切れない状況もあるようだ。

 日本の現役世界王者は10人になったが、もう一つ盛り上がりに欠く。黄金のバンタムとよく言われるが、海外では黄金のミドルと言われる。古くはロビンソン、その後もハグラー、レナード、ハーンズらが王者になった。村田も名を連ねることができるか。今年というより、今後のボクシング界の命運を左右する一戦と言えるだろう。【河合香】